気候変動への対応

気候変動への取り組み (TCFD提言に基づく情報開示)

応用地質グループ (以下、当社グループ) は、気候変動を含む環境の課題や、気候変動に伴う自然災害の激甚化の課題への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。

当社グループは、2019年12月、金融安定理事会 (FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)」の提言に、賛同を表明しました。TCFDの提言に沿って気候変動関連の財務関連の重要情報を開示します。

ガバナンス (体制)

サステナビリティの推進体制は下図の通りです。

「サステナビリティ推進委員会」では、気候変動に対する取り組み (TCFD対応を含む) などサステナビリティへの取り組みに関する方針や施策検討、ESG経営に関するリスク管理等の討議を行い、年2回以上の頻度で取締役会へ報告しています。

2022年は、TCFDに対応するために、サステナビリティ推進委員会の下部検討会として、「サステナビリティ検討会2022」および「マテリアリティに関わる事業化検討会」を組織して、それぞれ気候変動関連のリスクと機会について検討いたしました。表-1に各組織の主な役割と2022年の実績をまとめます。

表-1 サステナビリティ推進体制の役割および2022年実績
名称 主な役割 2022年実績
サステナビリティ推進委員会 気候変動に対する取り組み (TCFD対応を含む) など、当社グループのサステナビリティへの取り組みに関する方針や施策検討、ESG経営に関するリスク管理等の討議を行い、年2回以上の頻度で取締役会へ報告

委員長:サステナビリティ担当役員 (経営企画本部長)
委員:事業部長、部長等を含む計12名
開催回数:6回
討議内容:

  • 環境方針、カーボンニュートラル宣言
  • 「サステナビリティ検討会2022」および「マテリアリティに関わる事業化検討会」からの提言内容
サステナビリティ検討会2022 気候変動関連のリスクを検討し、サステナビリティ推進委員会に検討内容を提言

委員長:部長クラス (経営企画本部国内グループ担当室長)
委員:関係する部長・課長クラス計8名
開催回数:9回
討議内容:2030年、2050年における1.5℃、2℃、4℃シナリオ毎に下記の項目について検討

  • 当社グループを取り巻く環境
  • リスクと対応
  • 財務インパクト
  • 指標・目標 (KPI / KGI)
マテリアリティに関わる事業化検討会

下記のマテリアリティについて、具体的な取り組み (気候変動関連の機会) を検討し、サステナビリティ推進委員会に検討内容を提言

  1. スマートな社会インフラの整備
  2. 自然災害の被害軽減とレジリエントなまちづくり
  3. 脱炭素、持続可能な循環型社会の形成
  4. 豊かな自然共生社会の実現

委員長:執行役員 (事業部長)
委員:関係する部長・課長クラス、国内グループ会社部長等、計10名
開催回数:8回
検討内容:下記の項目について検討

  • 各マテリアリティに関わる機会の特定
  • 2030年に当社グループが目指す姿
  • コミットメント
  • 指標・目標 (KPI / KGI)
サステナビリティ推進部
  • サステナビリティに関する施策立案、推進、情報開示等
  • 取り組みに関するモニタリング項目の部署間調整、情報収集・整理
  • SDGsへの取り組み好事例のグループ共有、取り組みの継続性確保
  • SDGsに対する社員の意識づけや教育研修の実施
  • 気候変動関連のリスクおよび機会の検討
  • 「サステナビリティ推進委員会」「サステナビリティ検討会2022」および「マテリアリティに関わる事業化検討会」への提案、運営
  • 「サステナビリティアワード」の開催
    当社グループのサステナビリティへの取り組みを募集し、優秀な取り組みを当社グループに配信

戦略 (考え方)

当社グループは、表-2に示す3つの気候変動関連シナリオにおいて、2030年および2050年に発生する事象、当社グループへの影響のあるリスクおよび機会を検討、想定しました。リスクおよび機会とも、「移行リスク」では1.5℃シナリオで2030年頃、「物理的リスク」では4℃シナリオで2050年頃に最も影響が大きいと判断しています。

表-2 検討したシナリオ
シナリオ 概要
1.5℃シナリオ IPCCのRCP1.9シナリオなど代表される脱炭素社会を実現するための強力な施策・規制が実施される世界を想定し、2050年度までにカーボンニュートラルが実現する、という前提で検討
2℃シナリオ IPCCのRCP2.6シナリオなど代表される脱炭素社会を実現するための施策・規制が実施される世界を想定し、21世紀後半までにカーボンニュートラルが実現する、という前提で検討
4℃シナリオ IPCCのRCP8.5シナリオなどに代表される規制が進まずに気候変動による災害が多発する状況を検討

気候変動関連のリスクと機会の検討における期間と影響度の定義

気候変動関連のリスクと機会の検討にあたっては、影響を及ぼす時期および財務インパクトの影響度を、表-3および表-4のように定めています。

表-3 影響を及ぼす時期
短期 3年以内

中期 3年超~10年以内 (2030年を含む)
長期 10年超 (2050年を含む)
表-4 財務インパクトの影響度
影響度 定義 金額
事業活動が停止、もしくは大幅な縮小・拡大するほどの影響がある 10億円以上
事業活動の一部に影響がある 1億円以上10億円未満
ほとんど影響ない 1億円未満

気候変動関連シナリオに基づく事業活動のリスクおよび対応

1.5℃および4℃シナリオで想定した気候変動関連のリスクについて検討を行い、その結果 (リスクや主な対応) を表-5のようにまとめました。なお、検討の結果、「重大で対応が困難なリスク」はないと判断しました。表-5に示す潜在的な財務インパクトで「大」と判断しています「GHG (温室効果ガス) 削減のための事業スタイルの変化」については、環境負荷の小さい設備・技術の導入により対応可能と想定しています。

気候変動関連シナリオに基づく事業活動の機会および対応

当社グループが展開する事業は、サステナビリティに深く関わっており、気候変動関連のリスクの軽減に貢献すると判断しています。気候変動関連シナリオにもとづき事業活動の機会とサービス (取り組み) などの検討を行いました。その内容は表-6に記載のとおりです。

表-5 気候変動関連のリスク、潜在的な財務インパクトおよび主な対応
分類 想定される事象 リスク 潜在的な財務インパクト 影響を及ぼす時期 主な対応
1.5℃シナリオ:移行リスク 政策・法規制 炭素税や炭素価格 (カーボンプライシング) の導入
  • 炭素価格の内包化による燃料費等、エネルギー調達コストの増加
  • 炭素税課税やカーボンクレジット調達コストの増加
短期~長期
  • 再生可能エネルギー調達など、非化石燃料由来のエネルギー利用の促進
技術 GHG (温室効果ガス) 削減のための事業スタイルの変化
  • 化石燃料を使用した従来業務 (ボーリング調査等) の制限
短期~長期
  • 環境負荷の小さい設備・技術の導入
    • 車両のEV化・充電施設導入
    • 省エネ家電への置き換え
    • ボーリングマシンの電動化
    • 化石燃料の合成燃料への置き替え など
  • カーボンフットプリントへの対応
  • 再生可能エネルギー事業の支援など、カーボンニュートラル達成に向けた活動の推進
市場・評価 再生可能エネルギー需要の拡大
  • 脱炭素への転換、構造改革の遅れ
  • 社会的ニーズ低下による業績低下
  • 再生可能エネルギー調達コストの増加
中期~長期
4℃シナリオ:物理的リスク 急性的 異常気象による水害・土砂災害の増加
  • 被災による事務所機能不全、通信システムダウン、職員被災などによる事業継続中断・機会損失
  • 復旧・災害対策のためのコスト増大
短期~長期
  • 浸水災害などに対応した、事務所・営業所の移転の検討
  • BCPの強化
慢性的 平均気温の上昇・熱波の発生による環境変化
  • 気温上昇に伴う電気・水道使用量の増加
  • 資源高による水道・エネルギーなどの価格高騰に伴うコスト増加
短期~長期
  • 非化石燃料由来のエネルギー利用の促進
表-6 気候変動関連の機会、潜在的な財務インパクト (収益増大の寄与度) および主なサービス (取り組み)
分類 想定される事象 機会および主なサービス (取り組み) 潜在的な財務インパクト
(収益増大の寄与度)
影響を及ぼす時期
1.5℃シナリオ:移行リスク 政策・法規制 炭素税や炭素価格付け (カーボンプライシング) の導入
  • 炭素排出量の少ない物理探査による非破壊調査・メンテナンス業務の増加
  • 地質調査技術の自動化と脱炭素化の実施
中期~長期
技術 GHG (温室効果ガス) 削減のための事業スタイルの変化
  • GHGの貯留事業、森林管理事業、森林保全や植樹によるGHGの吸収・カーボンオフセット事業の拡大
中期~長期
サービス・市場 再生可能エネルギー需要の拡大
  • 再生可能エネルギー主力電源化への移行支援の拡大
  • 地域分散型の再生可能エネルギーの形成支援、風力・水力・地熱等の開発における適地選定・ソリューションの提供機会の拡大
  • 地域性を活かした地域循環共生圏の構築支援の拡大
中期~長期
4℃シナリオ:物理的リスク 急性的 異常気象による水害・土砂災害の増加
  • インフラ構造物のメンテナンスに係る業務支援・点検サービスの拡大
  • 自然災害の被害軽減対策や、生態系を活用した防災・減災への対応支援の拡大
  • 持続可能でレジリエントな社会 (循環社会) づくり支援の拡大
  • 企業の自然災害リスク対応支援の拡大
中期~長期
慢性的 平均気温の上昇・熱波の発生による環境変化
  • 自然生態系の保全と再生、自然環境の様相変化に伴う環境影響評価のニーズの高まり
  • 自然と人間活動との共生支援の拡大
  • 特定外来生物・化学汚染の対策・防除の拡大
  • 土壌・地下水汚染の事前察知、健全化による健康被害の防止と土地活用活性化の拡大
中期~長期

リスク管理 (体制)

2022年に応用地質単体において、気候変動関連のリスクおよび機会についての影響評価を行いました。引き続き、国内グループ会社、海外グループ会社についての影響評価を、それぞれ2023年、2024年に行う予定です。

評価結果は、サステナビリティ推進部にて集約し、当社グループとして特に重要と認識されるリスクと機会がある場合には、サステナビリティ推進委員会で討議・決定し、必要に応じて取締役会で審議します。

指標と目標

当社グループは、中・長期の指標と目標を検討し、環境に関わる長期目標を定める予定です。さらに、短期 (3年程度) の指標と目標を、「(仮称) 環境行動計画」で詳細に定めて管理する予定です。

気候変動の緩和と適応に関する指標は、GHG排出量総量を採用しています。また、脱炭素社会の実現に貢献するGHG削減貢献量の指標も設定し管理することも検討しています。

GHG削減の取り組み

GHG中長期削減目標

気温上昇1.5℃以内の実現に向けて、2030年までにScope1および2の実質ゼロ、2050年までにグループ事業に関わるすべてのサプライヤーの排出量を含むScope1、2、3についてカーボンニュートラル達成、という目標を設定しました (「カーボンニュートラル宣言」)。詳細については、カーボンニュートラル宣言ページをご覧ください。

応用地質単体および国内グループ会社の近年のGHG排出量を表7および表8に示します。

表-7 GHG排出量 (応用地質単体) (単位:t-CO2)
区分 2020年 2021年 2022年
Scope1 513 486 451
Scope2 1,458 1,368 1,293
Scope3 6,533 6,182 12,482
8,504 8,037 14,226
表-8 GHG排出量 (国内グループ会社) (単位:t-CO2)
区分 2022年
Scope1 959
Scope2 1,126
Scope3 11,986
14,071
※ 2022年のScope3:洋上風力事業支援業務などの事業拡大により増加。

GHG排出量の第三者検証

当社グループは、GHG排出量 (Scope1、2、3) については、信頼性の高いデータの情報開示が必須と考え、第三者検証を受けるべく準備を進めています。

CDP気候変動評価結果

国際的な非営利団体CDPは、気候変動や水に対する企業の取組をグローバルに評価しています。評価はA、A-、B、B-、C、C-、D、D-の8段階です。応用地質単体は、CDP気候変動2022でスコアB-の評価を受けました。