株主・投資家の皆様へ

2030年のありたい姿の実現に向け、
取り組みをさらに深化

未来の価値創造に向けて、当社グループの存在価値や今後の展望、戦略などをグループ全社員で共有することができたことは、非常に大きな成果でした。

現在、世界中で人と地球の未来に関わるさまざまな社会・環境課題が噴出しています。我々は、持続可能な社会を実現するために、これらの課題に対応し、1つひとつ丁寧に解決していかなければならない、非常に難しい時代の曲がり角に差し掛かっています。

国内事業では、複雑な地形や地質の上に建設する社会インフラの老朽化問題、激甚化・頻発化する自然災害への対応、さらにはカーボン・ニュートラルに貢献する再生可能エネルギーへの転換など、さまざまな社会課題が存在します。我々が提供するサービスは、常にインフラのインフラとして、不確実な地下の状況を的確に分析・評価し、そのアウトプットをわかりやすい形で提供することが求められます。

計測機器や探査機器の開発・販売を展開する国際事業では、欧州地域での洋上風力発電施設の建設や、米国、中東、東南アジアでのインフラ整備、インフラ管理ソリューション市場に高い需要があります。しかし一方で、地政学的リスクや不安定な国際情勢、資機材の価格上昇、激化する価格競争といった問題も生じています。こうした状況の中でも、我々はユーザビリティをさらに高め、計測や探査のイノベーションを推進することで、世界各国のクライアントの期待に応えていかなければならないと考えています。

このような局面において、2024年は、我々が社会に対してどのような価値を創造する企業グループであるかという明確な展望や戦略をグループ全社員で共有し、未来の価値創造に向けてのスタートを切ることができました。この点が最も大きな成果だと認識しています。

また、長期ビジョンや中期経営計画において設定した定量的および定性的な目標は、社員だけでなく株主・投資家を含むすべてのステークホルダーに対する重要なコミットメントと捉え、進捗状況を適時報告していきます。これにより、「ステークホルダーとの価値共創」を重視した経営がより深化していくものと確信しています。

応用地質グループは「人と地球の未来にベストアンサーを。」を経営ビジョンに掲げ、創業時の理念である「地質工学の創造」を礎に、地球科学に基づく深い知見と豊富なデータ、さらにはデジタル技術のイノベーションを通じて、引き続き困難な課題の最適解に迫り続けていきたいと考えています。

中計初年度は大幅な増収増益となり、良好なスタートを切ることができました。

「OYO中期経営計画2026」の初年度である2024年12月期は、良好なスタートを切ることができました。業績面では、前期比での増収増益を達成し、期初の予想を上回る結果となりました。具体的には、受注高は19.6%増の799億円、売上高は12.9%増の740億円、営業利益は54.1%増の43億円と大幅な増益を記録しました。

増収の要因としては、3つの事業セグメントが着実に成果を上げる中で、主に以下の3つが挙げられます。1つ目は、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に関連した業務の突発的発生、2つ目は、2024年2月に当社グループに加わった「三洋テクノマリン株式会社」の業績寄与、3つ目は、洋上風力発電関連業務の大幅な伸長です。特に洋上風力発電関連業務は、一案件当たりの調査委託費が高額で、案件数の変動が業績に大きな影響を与えますが、2024年12月期は想定を上回る受注成果を獲得し、業績の向上に寄与しました。

当期の増収要因の1つとなった防災・減災関連業務は、約60年前から継続している自主的調査が基礎にあり、当社グループが担うべき最優先の使命です。

2024年12月期における能登半島地震関連業務のように、地震や台風・豪雨などの自然災害が発生すると、直後から当社グループの活動が始まります。我々はいち早く被災地に赴き、現場を隈なく調査・分析し、その結果を防災・減災対策につなげることが、地域社会の安全・安心に貢献するものと確信しています。

防災・減災分野への取り組みは約60年前にさかのぼります。「1964年 新潟地震」の発生直後に、自らの判断で「自主調査団」を派遣し、「調査報告書」を作成・公表しました。地盤の状態、地震動の伝達、液状化現象の発生などの相関を調査できるのは、地震発生直後から復旧作業が行われるまでの短い期間に限られています。この約60年間、当社グループは自主的な取り組みを続け、世界各地で発生した地震に関する多くの知見を蓄積してきました。そして、この貴重なデータは、今、DX時代の先端技術の活用により、次世代の防災・減災対策に大きく寄与しています。

このような自主的な取り組みを背景に、災害発生時には必ず復興支援業務の依頼を行政からいただくようになりました。我々は「絶対に断らず、何を置いても第一に考え、すぐさま行動に移す」をモットーに取り組んでいます。人的資本には限りがあるため、全社員でシフト調整を行い、被災地に最善の対応ができる体制を整えています。

災害に対する当社グループの取り組み姿勢は、未来永劫変わることはありません。

利益率の急速な回復には、2024年初頭に行った組織・体制の抜本的改革による効率化が大きく貢献しました。

2024年12月期の連結業績における主な増益要因は、増収効果(約15億円)と売上総利益率の向上(12億円強)です。売上総利益率は前期比で1.3ポイント向上し、31.0%に達しました。この大幅な収益改善の根本的要因は、2024年初頭に実施した組織・体制の抜本的改革にあります。具体的には、セグメント再編による重複業務の解消、管理部門や営業体制の効率化が収益改善に直結しました。

特に、セグメント再編は1つ目の基本方針「セグメント戦略の推進」に基づいて行った改革で、収益改善に大きな効果をもたらしました。以前は、地方自治体からの業務依頼を待つ"受身"の営業が主体で、市場ニーズに応える"提案型"の営業ができない状況でした。この課題を克服するため、前社長の成田が2018年に支社制を廃止し、市場ごとの事業部制を導入しました。その結果、社員の意識改革が進み、"提案型"営業が根付き、官民比率も官偏重から民間比率が高まる方向にシフトしました。

しかし、同時に「非効率」という問題も浮上しました。1つの顧客窓口に複数の事業部が個別にアプローチし、東京一極集中により全国の現場への旅費が激増し、手間やコストのムダが生まれていました。2024年初頭のセグメント再編によってこれらのムダを一掃し、現在の組織は提案性を維持しつつ効率性を改善できたと考えています。

成長戦略の核となる基本方針「セグメント戦略の推進」については、引き続き事業収益性の向上を目指して、さらなる深化を図ります。

3つのセグメントでは、それぞれ「2025年セグメント方針」を掲げ、2024年の成果をもとに取り組みの深化を推進します。

「防災・インフラ」セグメントでは、「困り事が発生した時に技術者や専門家がすぐに来てくれる」という安心感や信頼感をお客さまに提供することが、受注獲得において最も重要です。このため、「持続可能な成長戦略を構築」という方針のもと、地域密着の対応が可能な体制づくりに向け、拠点力・技術力・グループ連携の3つの強化に取り組みます。

「環境・エネルギー」セグメントでは、「事業拡大・市場開拓を加速」という方針のもと、当社と子会社4社 (エヌエス環境株式会社、オーシャンエンジニアリング株式会社、日本ジタン株式会社、三洋テクノマリン株式会社) との連携を強化します。これにより、海洋風力発電関連事業の展開を、海底地盤調査に加え、海底ケーブルルート調査、港湾付近の不発弾調査、海洋生物・生態環境調査など、海洋事業全体へと拡大していきます。将来的には「海洋調査コンサルティングファーム」としての新たな業界ポジションの確立を目指します。

「国際」セグメントでは、製・販の両面から変革を推進しています。まず、米国子会社GSSI社での高収益・高品質の新製品への入れ替えや、当社の地盤4次元モニタリング (OYO Tracker 4D) の海外展開など、魅力ある提案が進められています。また、外部企業との連携により、販売チャネルのグローバル展開力も強化しています。これらを背景に、同セグメントでは「中東・シンガポール市場への挑戦」という方針の実現に邁進します。

当社グループの技術・サービスに対する時代の要請に対して真正面から対応し、ステークホルダーとともに、人と地球の未来のために新たな価値の共創を目指します。

2つ目の基本方針「バランスシートの最適化」については、目指すのは「ROEの改善・向上」と「株主還元の充実」です。株主や投資家にとって常に魅力的な投資対象となるよう努めています。

3つ目の基本方針「サステナブル経営の強化」では、"未来志向"が重要なキーワードです。

E(環境)への取り組みでは、事業活動における脱炭素の取り組みとして、自社技術・サービスである「ハザードマッピングセンサーソリューション」「3次元常時微動トモグラフィ」「海底微動アレイ探査」「3次元音波探査」について、これらのサービスが社会全体のCO2排出削減にどれだけ寄与できるかを示す「削減貢献」の可能性を算定し、開示しました。他社がこれらのサービスを使用することで、他社のCO2排出量 (Scope1・2) 削減に寄与し、当社の削減貢献が実現します。引き続き気候変動に関連する市場・事業の機会創出に向けた取り組みを推進していきます。

また、S (社会) への取り組みでは、持続的な成長を支えるために人的資本経営を強化し、従業員エンゲージメントの向上や人事制度の改革 (2026年度開始)、健康経営の推進を通じて、全世代の従業員が良質なパフォーマンスを発揮できる仕組みを構築します。これにより、従業員と企業の成長の好循環を生み出し、企業価値の持続的な向上を目指します。

G (ガバナンス) については、監査・監督機能の強化や意思決定の迅速化を図るべく、監査等委員会設置会社への移行を行い、未来志向のガバナンス強化を推進しています。

自然災害の激甚化やインフラの老朽化、海洋開発の加速など、当社グループの技術・サービスが必要とされる状況は年々深まっています。こうした課題に対して、我々は真正面から向き合い、従業員や地域社会を含むすべてのステークホルダーとともに、人と地球の未来のために新たな価値を共創してまいります。

引き続き、応用地質グループの経営にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2025年6月

代表取締役社長

天野 洋文