CFOメッセージ

株主還元のさらなる強化を基礎に
資本効率の改善を図り、
企業価値を高める

前中期経営計画では、財務・資本戦略を的確に推し進めた結果、今後につながる成果を上げた一方で、課題の積み残しも

当社グループは、前中期経営計画3か年 (2021年12月期~2023年12月期) の財務・資本戦略において、「積極的な成長投資」と「積極的な株主還元」を基本方針とし、目標とする経営指標(最終年度目標)として「ROE 5%」、「売上高営業利益率 8%」(ともに連結) を重視・追求してまいりました。

成長投資については、まず、オーガニックな成長に向けたイノベーション戦略として、研究開発費45億円、DX投資10億円、合計55億円のイノベーション戦略投資 (3か年累計) を計画していましたが、実際には、それぞれ約58億円、約14億円、合計約72億円と計画を約30%上回る投資を実行いたしました。次に、インオーガニックな成長戦略としてM&Aを積極的に推し進めるという方針のもと、「M&A投資枠 120億円」を設定しましたが、実際のM&A投資実績は3社で合計約40億円となりました。投資枠の金額を下回ったものの、シンガポールでインフラモニタリングに強みを持つGeosmart International社、AIベンチャー企業の(株)OX、磁気探査・海洋調査の日本ジタン(株)と、当社のビジネスと大きなシナジーが期待できる3社の買収を実現することができました。加えて、2023年12月には、海洋調査の三洋テクノマリン(株)の買収について基本合意にいたった (買収クロージングは2024年2月で上記約40億円には含まれず) ことは大きな成果でした。

株主還元については、2021年から「連結配当性向」の目途レンジの見直し (従来の30~50%から、40~60%に変更) を行うとともに、機動的な自社株買いも展開しました。その結果、前中期経営計画期間3か年の平均連結配当性向は47.0%、自己株式取得も合わせた平均総還元性向は110.0%と、高い水準を維持しました。なお、2023年12月期の連結配当性向は34.7%と目途レンジを下回っていますが、当期純利益には米国子会社において約10億円の繰延税金資産計上という一過性の要因が含まれており、この影響を除いたベースでは、連結配当性向は46.6%となります。

一方、前中期経営計画で目標とした経営指標については、今後に課題を残す結果となりました。ROEは、最終年度5.6%と目標の5%を上回ったものの、ROEの分子である当期純利益から前述の一過性の繰延税金資産を除くとROEは4%台となり、実質的には未達であったと認識しております。また、売上高営業利益率については、最終年度4.3%と、目標の8%を大きく下回る結果となりました。

「事業収益性の向上」と「資本効率性の向上」を重要課題と認識し、新中期経営計画では「バランスシートの最適化」を推し進める

前中期経営計画を終えて、「事業収益性の向上」と「資本効率性の向上」という2つの重要課題が浮き彫りになりました。また、新中期経営計画策定の過程で、当社のPBRが0.7~0.8倍と1倍割れしている要因とその対策を検討した結果、「PBR=PER×ROE」の関係式において、当社のPERは21~22倍と、プライム上場企業平均の16~17倍を上回っており、事業の成長性については投資家から高い評価をいただいている一方で、ROEが同業他社と比べても低いことがPBRの1倍割れの主たる原因であると分析しました。

こうした課題認識とPBR1倍割れの分析結果を受けて、資本効率 (ROE) を改善するため、「ROE=当期純利益÷自己資本×100」の関係式において、分子対策として「セグメント戦略推進による収益性改善」、分母対策として「バランスシートの最適化」が必要であると結論づけました。

「バランスシートの最適化」に向けた重点施策として、株主還元のさらなる強化を図るとともに、レバレッジを高める財務戦略も展開

「バランスシートの最適化」に関しては、自己資本の増加を抑制するために、株主還元のさらなる強化策として、「配当政策の見直し」と「機動的な自己株式取得」を推し進めることとしました。このうち「配当政策の見直し」については、2021年に行った見直しをさらに前進させ、「連結配当性向50%以上かつ連結株主資本配当率 (DOE) 2%以上を原則として安定的に配当」という方針に変更しました。これにより、株主資本の2%を配当金額の下限として、単年度の当期純利益の水準に左右されることなく従来以上に安定的に配当を行うことをコミットいたしました。「機動的な自己株式取得」については、前中期経営計画期間に引き続き推し進めてまいります。

また、新中期経営計画では、キャッシュアロケーションを明確化することで、従来、投資家の皆さまからご質問の多かった手元キャッシュの使途についてもわかりやすく明示しました。営業キャッシュフロー、ノンコア資産の売却、手元資金を原資として、積極的な成長投資、売上増に伴う増加運転資金、株主還元に適切に配分しつつ、新中期経営計画期間中の新たなM&Aの資金は、原則として有利子負債を活用することで財務レバレッジを引き上げ、ROEの改善につなげるという戦略です。

新中期経営計画では、より大きなイノベーション開発投資に加え、積極的な人的資本投資も計画

新中期経営計画における成長投資は、さらに積極化していく方針です。3か年累計比較で、前中期経営計画期間の成長投資である「イノベーション投資」が計画55億円、実績約72億円であるのに対し、新中期経営計画期間の成長投資である「イノベーション開発投資」は80億円を計画しております。

これに加えて、今後、人的資本経営を積極的に推し進めていくべく、従業員の給与引き上げとは別に、「人的資本投資 10億円」(3か年累計)を新たに計画しました。これは、「人材ポートフォリオの拡充」、「働きやすさと働きがいの実現」の2つの目的を持ち、前者については、人材獲得や教育研修拡充のための投資、資格取得支援などのほか、事業のさらなるグローバル化を視野に海外子会社との国際人事交流等も計画しております。また、後者については、健康経営施策の推進や福利厚生制度の拡充を計画しております。今後も引き続き、当社グループの積極的な成長戦略を財務面から下支えし、企業価値/株主価値の持続的な向上に寄与してまいります。

配当性向と総還元性向の推移

代表取締役副社長

平嶋 優一