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インタビュー

東日本大震災から10年 ─ 「最大クラスを想定しなければならない」変化した津波への考え方と対策

2021.05.31

大きな津波被害を出した東日本大震災から10年が経ちました。地震防災のための津波のシミュレーションを行なっている根本信氏に、東日本大震災の津波について、また、その後の津波防災の知見に基づく各自治体での津波の対策の状況についてお話を伺いました。

高さ40メートル、東日本大震災の津波

東日本大震災で発生した津波にはどんな特徴がありますか?

日本列島が乗っている大陸側のプレートを、その下に沈み込んでいる太平洋プレートが境界で引きずり込んで、歪みが溜まった大陸側のプレートが戻ろうと反発した時に海底が跳ね上がり、海水が持ち上がって津波が発生しました。その境界の滑りが途方もなく大きかったということです。これまで世界中で知られている地震の中でも、最大級の大きさの滑りでした。それによって発生した巨大な津波であったというのが最大の特徴です。

津波の最大の高さはどれくらいでしたか?

岩手県の沿岸で最大40メートルほどにもなりました。津波が高かった地域は、1896年の明治三陸地震や1933年の昭和三陸地震で津波が高かった地域と良く一致しています。

場所によって津波の高さは違うのですか?

東日本大震災の津波で見れば、断層の滑りが大きかった岩手県~福島県の沿岸で津波が高く、大局的には、大きな滑りが生じた場所の近くで津波が高くなります。その一方で、海底の地形によって波の集まりやすいところは津波が高くなりますし、海岸が扇状地のように遡上しやすい地形の場合には、津波がより高く遡上します。また、湾の中で反射した波同士が合わさって高くなる場合もあり、局所的に見ると津波の挙動は複雑です。

40メートルというのは、どこからどこまでの高さですか?

平均的な海面の高さから陸上で到達した高さまでです。陸上は崖などに残された倒木や漂着物の高さなどで計測されます。

ハザードマップの比較で津波の大きさに衝撃

震災の後、根本さんはどのような対応に当たったのですか?

震災の後、2011年の4月から9月まで、政府の中央防災会議で、この地震によって何が起こったのかを調査する"東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会"がもたれました。この場において、当社は内閣府の裏方として資料の作成に当たりました。元々、2003年に中央防災会議で策定された「東南海、南海地震対策大綱」の見直しに向けて、2010年より南海トラフ巨大地震に関する調査業務を受託していたのですが、その業務期間中に東日本大震災が発生したため、急きょその時の受託業務の中で東日本大震災についても地震の整理をすることになり、その一部の資料が前述した"東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会"に出されることになったのです。

東日本大震災の地震を整理する中で、津波について気づいたことはありましたか?

東日本大震災での津波の実際の浸水状況と、震災前に各地域で作成されていた津波ハザードマップを比較したのですが、仙台平野などで、東日本大震災の浸水範囲が震災前の想定を大幅に超える結果であったことに大変ショックを受けました。一方で、三陸沿岸では、津波の高さが明治三陸地震とよく一致していることに驚かされました。

南海トラフの想定に生かされる東日本大震災の津波

東日本大震災の結果を受けて、その後の南海トラフ巨大地震に関する受託業務では、それ以前と比べて何らかの変化はありましたか?

南海トラフ巨大地震に関する受託業務では、東日本大震災によって得られた新たな知見を南海トラフ地震に当てはめて、「想定しうる最大クラスの地震」のモデルに基づく津波のシミュレーションを行うという作業を行いました。2012年3月末の第一次報告では、地震の想定をした上で、海岸の津波の高さが高知県の黒潮町で34メートルというシミュレーション結果になり、国によりそれが公表されました。その後、8月の第二次中間報告では浸水被害を予測しました。

東日本大震災を受けて、その後の地震の想定は大きく変わったのですか?

東日本大震災の後、2012年に公表した南海トラフ地震のモデルでは、断層が40メートルくらい動くという想定になりました。実はそれ以前の想定(2003年公表時)は、最大でも12メートルでした。それでも当時は、10mを超えるようなすべり量は想定として大きすぎるのではないかと指摘を受けていました。しかし、東日本大震災によって日本近海のプレート境界でも数十メートルの滑りが起こるという現実を突きつけられ、東日本大震災以降では、地震学的に想定しうる最大クラスを前提にするという考え方になりました。

広範な海底地形データを作成した応用地質の強み

新しい南海トラフ地震のモデルはどのように生かされましたか?

震災後、国での地震検討結果を受け、各自治体でも南海トラフの地震の被害想定が開始されたのですが、応用地質も引き続き、各県において被害想定の業務を受託し、最新の知見を反映した新たな被害想定の策定に数多く貢献することができました。その中でも、県レベルのよりきめ細かな精度での津波シミュレーションも行っています。

各自治体ではどのように津波シミュレーションを行うのですか?

国でも県でもシミュレーションを作成する作業の内容はあまり変わりませんが、自治体の場合は、国でのシミュレーションをベースに、より細かい地形データを用いて、より精度の高い津波のシミュレーションを実施します。内閣府の業務で当社が作成した津波モデルのシミュレーションを都道府県、市町村でより細かくしていく過程は、興味深いことでした。

参照) 応用地質「津波高・浸水範囲予測サービス」

現在と過去では、津波のシミュレーションでは精度は大きく変わっていますか?

例えば、昔は、海底地形のデータが整備されていなかったこともあり、それらを反映したシミュレーションまでは実施できませんでしたが、今は、詳細な海底地形のデータが整備されたことで、津波の動きがより正確にわかるようになりました。東日本大震災についても、詳細な海底地形を反映したモデルを用いて津波シミュレーションを行うことで、観測された津波のデータを非常に良く再現出来るようになっています。

海底地形データを入れることは、一般的にはあまり行われていないのですか?

津波シミュレーションに用いる海底地形データは、海上保安庁などの図面・データを収集・整理して作成しますが、広範囲のデータを作成するには大きな労力が必要です。当社では、内閣府における業務で広い範囲を対象として詳細なデータを整備してきた経験があり、また、日本の沿岸で発生する津波は一通り評価を行っており、多くの知見を蓄積しています。その経験と知見が当社の強みと思います。

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