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インタビュー

重要性がますます高まるBCP 実効性のあるBCPとするには〈後編〉

2022.07.21

自然災害の活発化や感染症パンデミックなど、企業を取り巻くリスクが多様化・拡大する中で、事業継続計画(BCP)の重要性が改めて注目されています。前編ではBCPの現状と課題、実効性のある策定方法などについて専門家に話を伺いましたが、後編では、BCP策定の具体的な支援サービスの内容や進め方などについてご紹介します。

応用地質のBCP策定支援事業

台風や豪雨災害が激甚化・頻発化し、また地震・火山活動も活発化するなど、近年、企業活動を取り巻く自然災害のリスクがますます高まりつつあります。自然災害以外にも、世界的な感染症拡大や紛争勃発による移動制限、物流の混乱など様々な問題が企業活動に深刻な影響を及ぼす中で、企業の事業継続計画(BCP)に対する重要性が改めて注目されるようになってきました。

各種の自然災害のメカニズムの調査やその対策のコンサルティングなど、「防災・減災事業」を手掛ける応用地質では、その専門性を活かし、これまで数多くの企業や組織のBCP策定を支援してきました。今回は、応用地質の中でBCPに関わるコンサルティング業務に専門的に従事されている防災・減災事業の野口 礼人氏に、昨今のBCP策定の現状や課題等についてお話を伺いました。

2回にわたる連載のうち前編ではBCPを取り巻く状況や日本における策定状況についてご紹介しました。後編となる今回は、応用地質のBCP策定支援事業や事業を通して現場で感じていることなどについてご紹介します。

応用地質株式会社 防災・減災事業部 野口 礼人

応用地質は、いつ頃、なぜ、BCP策定支援を開始したのでしょうか?

OYOグループとしては、今から15年前くらいではないかと思います。当時も、行政向けの防災計画には対応しており、民間向けにも、地震による影響(損失)を評価するサービス等も提供していましたが、BCPというプラン作りまでは手掛けていませんでした。しかし、リスク評価だけでなく、そこで浮かび上がった問題への対応策までご支援することが求められるようになり、この取組みを始めました。

BCP策定支援サービスを提供している会社は、一般にはどのような業種なのでしょうか。その中で、応用地質のBCP策定支援サービスの主な特徴を教えてください。

BCPの策定支援をしている会社としては、特に民間企業向けでは、損保系あるいは独立系のリスクコンサルティング会社が多いかと思います。当社のような自然災害や地盤の調査から出発している会社は珍しいのですが、むしろ、災害を熟知し、その土地の強み・弱みや、災害による建物・設備への影響を、グループ内で評価できるところに特徴があり、強みになっていると思います。

また、BCPを「絵に描いた餅にしない」ことを重視しており、BCP策定後の事業継続マネジメント(BCM)のサポートも対応しています。例えば、災害時にお客様の会社で実際に発生しうる状況を想定し、シナリオ作成や訓練といったサービスも提供していますし、多数の事業拠点を持つような企業向けには災害対策本部での情報収集ツール等も提供しています。

応用地質のBCP策定支援サービスは、具体的にどのように進められるのでしょうか?

まずは、お客様の事業継続に関する取組みの現状を確認させていただくところから始めます。その後、BCPの策定や見直しに向けた社内ワーキングチームを立ち上げていただき、月に1回ほどのペースで数回のミーティングを開催いたします。このミーティングの場でディスカッションを行い、業務資源に関する具体的な情報も引き出しながら、BCPの策定や見直しを支援していきます。

お客様によっては、保有している工場等の建物の脆弱性を特に危惧されているような場合がありますので、そのような場合は建物のエンジニアリング評価や損失評価を専門に行う当社グループ会社と協力して、最初の調査を手厚くする場合もあります。

私たちは、BCPが出来上がった時点がお客様にとってのゴールではなく、そこに書かれた対応策、つまり、目標復旧時間内に事業を再開するための方策をいつでも実行できるよう、数年かけてでも取り組んでいただくことが重要であると考えており、ゴールは「災害時に確実に事業が継続できる(経営が存続できる)状態になること」だと考えています。

工期や費用など、お話しできる範囲で教えてください。

BCPの策定には、お客様との社内ワーキングが最低5回くらい必要になりますので、ご相談を受けてから、ドキュメントとして形にまとめるまでに、半年くらいの期間が必要になります。また費用は、企業規模や業種、ご要望によって、検討する量が変わってきますので、一概にはお答えできませんが、できるだけご予算に応じた対応ができるようにしています。

BCP策定支援事業を通して

応用地質にBCP策定支援を依頼される企業とは、どのような業種や分野が多いのでしょうか?

特定の業種が多いということはありません。これまでの例では、メーカー、運輸・倉庫、エネルギー、不動産、商社、空調、病院、市役所、病院、ごみ処理施設、市の水道部門など、多岐にわたっています。

東日本大震災から11年経過しましたが、企業のBCP策定にかかるニーズの変化などはありますか?あれば、具体的にはどのような変化でしょうか?

よくあるのは「震災の後、BCPを作ったけれど、これで大丈夫なのか見直してほしい」というご要望や「取引先の要請で、確実に業務を継続したいので、BCPをきちんと作成したい」というご要望ですね。これは、BCPを「実効性のあるものにしたい」という考えが、以前よりも高まっているためだと思います。また、BCPを作っただけで終わらせず、平常時の取組みとして展開するBCMを支援してほしいというご依頼も増えています。

応用地質がBCP策定支援を受託した企業のご担当者の声として、BCP策定に取組むことになった動機や背景などは、どのようなものがありましたか?

そうですね。やはりそれは「災害が起きても事業(業務)を早期に、確実に再開したい。事業の停止で、お客様に迷惑をかけられない」という切実な事情だと思います。

余談になりますが、あるメーカーのお客様がBCPの相談をしたいというので訪問してみると、立派なマニュアルをお持ちだったので、「これで十分ではないのですか?」と逆にお尋ねしました。すると「首都直下地震が起きたら、このとおりにできるとは誰も思っていない」と言われるのです。要するに「絵に描いた餅になっている」ということなのです。その理由は「首都直下地震が起きたら会社が停電してしまい、電話も通信もできなくなるから」ということでした。つまり、必要な行動は記載されているが、災害による影響を考慮していないので、「その通りにできるはずがない」と社内では冷めた目で見られているとのことでした。このため、この企業には「現在のマニュアルをBCPにバージョンアップして、実効性のあるものにすること」をご提案し、支援させていただきました。

最後に、これからBCP策定に取り組む企業の担当者に向けて、考え方や取り組み方法など、アドバイスがあればお願いします。

当社では35の択一式の質問に答えていただければ事業継続に関するお客様の現状の強み・弱みが把握できるWebサービス「企業防災力評価サービス」を提供しています。このWebサービスは、自由にお使いいただくことができ、評価がレーダーチャートなどで見られるようになっています。

BCPは、単に安否確認や被害確認などの「初動対応」だけを整理するものではなく、「事業を早期に再開し、企業を存続させるための経営戦略」です。ぜひそのことを忘れないでいただきたいと思います。

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