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コラム

倒木による事故を防ぐ「樹木腐朽空洞調査」~樹木の点検・診断の効率化に役立つレーダ機器~

2024.10.09

街路樹や公園木が倒れ事故につながるケースが年々増えているため、樹木の安全を確認するための点検が急ぎ進められています。しかし、多くの時間と労力がかかってしまうほか、人手不足や予算不足により、十分な点検が行えないことも大きな課題となっています。今回は、そのような課題の解決に貢献する、地中レーダー機器を利用した最新の樹木診断方法をご紹介します。

街路樹や公園木の倒木による事故やトラブルが年々増加

緑化や環境保全を目的として道路沿いに植えられた街路樹や公園木。この街路樹や公園木が倒れ事故につながるケースが年々増えています。

中には、倒木により人がケガをしたり、車や家屋を直撃して破損させたりといった事故も発生しています。また、事故には至らなくても倒木が人や車の通行を妨げるケースや、樹木の根が大きく広がって道路の舗装にヒビが入るといったケースなど、道路の安全に関わる問題も多発しています。

こうした街路樹や公園木の問題が年々増加している原因のひとつは、樹木の高齢化・老朽化です。高度成長期に植えられた街路樹や公園木の樹齢が数十年を超え、老朽化したり弱ったりしているものが増えているためです。また、老朽化だけではなく、最近では、地球温暖化の影響による台風などで、今までにない豪雨や強風が発生していることも、倒木のリスクを高めているといわれています。

街路樹や公園木の点検により倒木のリスクが高い樹木を診断

街路樹や公園木の事故やトラブルが増えていることなどから、樹木の安全を確認するための点検が、道路を管理する自治体や公園管理者により急ぎ進められています。

樹木の点検では、パトロールを行って「枝葉を含む樹形に異常が見られないか」「樹木が傾いていないか」といった点から樹木の生育状況を確認し、詳しい診断が必要な樹木を選定するのが一般的です。

生育状況に異常が認められた場合は、個別に外観を詳しく調べたり専用の器具を使ったりして、倒木などの危険度を診断し、「日常的な観察や点検を続ける」「剪定や樹体保護などの処置を行う」などの対応を決めます。

病気などで内部が朽ちて弱くなっていたり空洞ができていたりする場合は、倒木のリスクが高いとされており、診断の結果、倒木の危険度が高いものは撤去や植え替えといった対策が取られます。

樹木診断では省力化が課題になっている

樹木を診断するためには、樹木の傾き・幹 表面に口の開いた空洞・木材腐朽菌の繁殖を示すキノコ・幹に穴を開ける病害虫などの有無を目視で確認する方法や、木槌で叩いて空洞があるかどうかを調べるといった方法 (外観診断) があります。

しかし外観診断は、樹木医など樹木の知識がある専門家が樹木を1本ずつ見回る必要があり、多くの時間と労力がかかってしまいます。また、前述したパトロールによる点検も含め、倒木の危険度が高い樹木を見落としてしまう可能性もあります。

さらに、人手不足や予算不足により、十分な点検が行えないことも大きな課題となっています。樹木診断は専門的な知識がある職員や樹木医が行うことが指定されていることがほとんどですが、豊富な経験を持つ専門家は数が限られていることも悩みの種です。

このため、樹木医による診断以外の方法も、多くの自治体で模索されるようになってきました。

樹木の内部や地中を可視化する機器で診断を効率化

樹木医の診断以外の方法としては、最近では地中レーダ機器を利用して樹木内部の状況を診断方法があります。この方法では、樹木に専用の機器を押し当て、幹のまわりをぐるっと走査させることで、危険木の可能性があるかどうかを効率よく調べることができるほか、より詳細に解析することで、樹木内部の腐朽の度合いや空洞率を具体的に算出することもできます。

機器を使うことで、専門家による外観診断の負担を軽減するとともに、外観診断のみでは判断できないような危険木の見落としも減らせることが期待できるため、従来の方法に加え、このような新しい方法を導入する自治体も増えてきています。

しかしながら、樹木のすべてで機器を用いた精密検査を行えば、かえって時間もコストもかかってしまうケースもあります。

応用地質の提案する効率的な樹木診断

そこで、応用地質では、『予備調査』により樹木の外観観察を行い、レーダ機器を使用した『簡易診断』によって危険木の可能性のある樹木を絞り込むとともに、危険木の可能性のある樹木に対してのみ『精密診断』を行う方法を提案しています。これにより、対象エリアのすべての樹木を低コストかつ効率的に診断することが可能になります。

簡易診断のイメージ図

※ 透過波:送信アンテナにより発した電波が、幹内部を通って受信アンテナにより受信した波

精密診断のイメージ図

また、樹木を支えているのは、幹だけではありません。根っこが腐食していたり、生育が不十分であったりすると、強風等による倒木のリスクは高くなります。そこで応用地質では、幹の調査だけではなく、レーダ機器を使用した根系分布の調査もサービスとして提供しています。

根茎調査のイメージ図

併せて、これらの診断結果と樹木の位置情報などを合わせたデータベース構築のサービスも行っています。このようなデータベースにより、その後の診断結果のデータも集約していくことで、街路樹や公園木の維持管理の効率化をさらに進めることも期待できます。

最新技術を用いつつ、さまざまな手法を効果的に使いわけたり組み合わせたりすることで、効率的で持続可能な樹木の管理を実現し、快適で緑豊かなまちづくりに貢献しています。

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