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インタビュー

応用地質のプロフェッショナルVol.2
~道路陥没事故を未然に防ぐ!路面下空洞探査チームを率いて 鴨下智裕~

2021.00.00
路面下空洞探査チームリーダーの鴨下智裕氏(右)、と羽田智氏(左)。業務で使用される路面下空洞探査車の前で。

道路陥没、ひいては、これにより引き起こされる交通事故の原因となる路面下の空洞。「路面下空洞探査チーム」を率いて、この危険な路面下空洞を見つけ出す業務にあたるメンテナンス事業部・鴨下智裕氏にお話を伺いました。また同チームのメンバーである羽田智氏にもご同席いただきました。

そもそもは海の男だった?!

応用地質に入社された経緯はどのようなものでしたか?

【鴨下】応用地質と一緒に仕事をしていた大学の先生の紹介でした。その頃、応用地質では海洋探査のための人材を募集しており、私は、海洋資源学科の学生でしたので、応募しました。採用試験に行って初めて、こんなに大きな会社だったのかと知り、びっくりして“受かるわけない”と思いました(笑)。

地質の会社である応用地質が“海”を学ぶ学生さんを探していたのはなぜですか?

【鴨下】私が応募した1991年頃は、明石海峡大橋や東京湾アクアラインなど、海をまたいだ大規模な道路建設事業が数多く進められていた時代でした。応用地質も、こうした海上のインフラ建設に不可欠となる海底の地質調査を主とする海洋事業に乗り出したタイミングだったのです。

入社後に従事された海での仕事はどのようなものでしたか?

【鴨下】海底の地盤調査をしました。音波探査といって、船上から海底に向かって音波を照射し、その反射波を測定して、海底面や海底の下の地質構造を視覚化するものです。こうした音波などの物理現象を利用した地質調査の方法を総称して、「物理探査」といいます。医療で言うMRI検査のような非破壊検査技術を地盤に対して行っているとお考え下さい。業務のあるところへは日本全国津々浦々どこへでも行き、沿岸部を転々と調査して回りました。

念願かなった海上でのお仕事は充実していたのではないですか?

【鴨下】そうですね、人が見られない景色を見られたのが良かったです。海の美しさ、夕陽、夜景、そして、朝日…。以後も、ずっと海洋物理探査のキャリアを積み、最終的には米国子会社で海底での石油探査事業にも従事しました。

“物理探査の腕前”を路面下に発揮

今、従事されている路面下空洞探査とはどのような業務ですか?

【鴨下】地中レーダを積んだ「路面下空洞探査車」という専用の車で走行しながら道路の下の空洞を探査する仕事です。レーダから地中に向けて電磁波を照射し、その反射波を測定・解析します。空洞の可能性がある異常信号を見つけると精査をし、時には道路に孔を開けて特殊カメラで確認します。空洞を検出すると、いつ陥没しそうか、原因は何か等を分析し、道路管理者と協議の上、直ちに修繕工事を行うべきか、経過観察にするかなどの提案をします。

どのような経緯で海洋探査から、陸上の探査に転向したのですか?

【鴨下】2012年に米国から帰国し、海洋事業に携わりながら路面化空洞探査の手伝いを始めました。2010年頃から埋設管の老朽化等による道路陥没の問題がクローズアップされ始めたので、当社も探査事業に乗り出していたのです。私は、海洋で学んだ調査技術を活かし、探査車の開発においても搭載するGPSに関する技術的なアドバイスなどを行っていました。そして、いつしかこちらが本業になり“海”から“陸”へ上がったというわけです(笑)。

路面化空洞探査の業務へは、どういった依頼が多いのですか?

【鴨下】自治体からの依頼が主です。例えば、市道で陥没が起きたところ、起きそうなところ、埋設管があるところなどを調査するよう依頼されます。一回の業務で平均して40~50kmくらいの距離を走行し、調査します。地中レーダは探査車の車幅分までしか調査できないため、道幅全部を網羅するために同じ道路を最低2回は走ります。

業務において大変なのはどんなことですか?

【鴨下】業務依頼は9月から2月に集中します。1案件あたりの調査期間が概ね3~4ヶ月かかるため、この時期には1人が3件以上の業務を抱えることもあり、大変な負担になります。こうなると専門のスタッフは社内での解析業務に集中的に配置し、現場での測定は、別の物理探査チームや社内の別部署の社員に支援を要請したりします。また、レーダで空洞を検出後、現場で試掘調査をした結果、想定よりも大きな空洞が見つかることもあります。このようなケースでは、緊急事態として直ちに開削工事を行うか、応急的に通行止めとするかなど、すぐに決断してお客様に提言するなど、シビアな対応が必要となることもあります。

空洞を見逃さないために一番気を使うことはなんでしょうか?

【鴨下】疑わしい異常信号は全て検討し、空洞の可能性を見極めていくことです。そのため、解析は複数人で行い、さらに解析者以外の職員も入った社内判定会議を行います。これは、空洞かどうかを判定するのは人のため、その人の見方や感覚によって評価が異なることがあり、異なる感覚を持つ者どうしで意見を交わすことがより判定の精度を高めると考えるからです。

羽田さんも鴨下さんとは感覚が違うと思われますか?

【羽田】はい。鴨下さんがこれは空洞だと言っても、私は空洞じゃないと判定したり、反対に、私が空洞だと主張しても、鴨下さんが空洞じゃないと言ったりすることがあります。同じ感覚の人同士だと多角的な評価ができない危険性があるため、必ず違う感覚の目でダブルチェックすることが重要だと考えています。

路面下空洞探査車の後部に取り付けられた地中レーダ

解析を劇的に変える最新AIの技術

最新の技術にはどのようなものがありますか?

【鴨下】AI(人工知能)を開発して導入しています。社内には専門技術者がいますが、路面下空洞の解析には膨大な時間を要します。技術者の数にも限りがあるため、ある一定の業務量を超えて皆が多忙になると、空洞の見逃しが起きないとも限りません。このため、解析作業を補助するためにAI解析を導入しています。

もう実用化されているのですか?

【鴨下】3年ほど前から実務での運用を行っています。開発初期のものは空洞でないものも空洞と判断し、多数の誤検出をしてしまうなど問題がありましたが、その後改良を加え、現在は人間と同程度の検出レベルとまでは言いませんが、本当に危険な異常信号は見逃さないなど、問題なく使えるようになりました。

省力化になりましたか?

【羽田】以前は、大きなPCモニターにレーダの波形記録を映し、一から異常信号を探す作業を行っていましたが、今は、AIがあらかじめ異常個所をマーキングしてくれているのでかなり楽になり、その分、チェック作業など見落とし防止に時間を使うことができます。

逆に、AIを導入したことで、注意を要することはありますか?

【鴨下】AIの結果を100%信じてはいけないということです。空洞には二つとして同じ形状のものはありません。AIには多くの教師データをインプットさせていますが実際のデータには予測外のものもあると考えています。そのため、空洞の解析には、最終的には経験を積んだ技術者の目が必要です。また、機械に頼り過ぎると、そのような技術者が育たなくなります。そのため、AIを活用しつつも、技術者の育成に力を注いでいます。判定会議では、何故それを空洞と判定したのか、判定した人間がきちんと理由や意見を言わないといけないようにしています。AIなどの機械を使いこなすためにも人材育成がより重要になっていると思います。

しっかり後輩を育成する鴨下さんは羽田さんにとってどんな先輩ですか?

【羽田】技術に対して非常に真面目な人です。自分にも部下にも妥協をしません。現場でのデータの採り方、チェック、解析、考え方、最終的な報告、全てにおいて一連の流れを徹底して教えてもらっています。頼りがいのある先輩です。

AIが検知した異常信号

後輩たちにやりがいのある職場を

最後に今後の展望を教えてください。

【鴨下】路面下空洞探査の技術を応用して、もっと様々な市場で可能性を広げていきたいと思っています。もちろん現在も、路面下空洞探査以外にも地下埋設管の探査の仕事なども行っていますが、さらにこの技術の可能性を広げたいと考えています。そのためには、後輩たちからも今後取り組みたい仕事などの提案を上げてもらいたいですし、私は管理者としてマネジメントし、知見の及ぶかぎり応援し、より面白い仕事を創出して、後輩たちにとってやりがいのある職場を目指して行きたいですね。

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