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コラム

人命を奪う恐ろしい土砂災害 ~防災対策の種類と最新の調査・モニタリング技術~

2021.08.03

一瞬にして多くの人命や財産を奪ってしまうのが土砂災害の恐ろしさ。第1回は、土砂災害3つのタイプ「土石流」、「地すべり」、「崖くずれ」についてお伝えしました。今回は、これら土砂災害に対する防災対策工事や、DXを活用した最新の防災技術などについてお伝えします。

土砂災害から人々を守るため防災対策

土砂災害から住民の命や財産を守るため、国や自治体では「土石流」、「地すべり」、「崖くずれ」、それぞれの災害発生を抑えたり、被害を最小化する防災施設の整備を行っています。

例えば、土石流に対しては、砂防堰堤を設置したり、地すべりや崖くずれに対しては、原因となる地下水を排除する対策やアンカー工、山の斜面を崩れないよう固定するロックボルト工や法枠工などの防災工事が施されたりしています。

皆さんもハイキングなどで山に入った際や、斜面のある道路などを通行中にこのような施設を見たことがあるのではないでしょうか。

砂防堰堤 (砂防ダム)
ロックボルト+法枠工

危険な斜面に対して、どのような対策の工法を選択するかは、その斜面の地質構造や土砂災害の発生メカニズムなどを調査して判断する必要があります。地質調査の結果を受けて、適切な対策工の設計を行い、工事を行うというのが一般的です。また、これらの防災施設も、人口構造物である以上、経年劣化します。このため、定期的に点検し、補修していく必要があります。また、地すべりや崖くずれについては、対策工事後にも効果が得られているか、斜面変動が起こっていないか、継続的にモニタリングを行なうこともあります。

応用地質では、これらの対策工事に必要な発生原因・メカニズムの調査、対策工事の設計、また、対策後のモニタリング、対策施設の老朽化点検・補修設計などを行い、土砂災害から人々の暮らしや経済を守る仕事を行っています。

注目の最新技術、そのポイントは「地質」と「DX」

土砂災害の3つのタイプのいずれに対しても、災害発生を防ぐポイントとなるのは「地質」です。なぜなら、同じ山の形をしていても、地質構造が異なれば、崩れ方や被害の大きさが異なることがあるからです。このため、土砂災害の危険のある場所では、対策工事をする前に、まずは斜面の地質調査を入念に行わなければなりません。適切に地質構造を把握した上で、最適な対策工の設計をし、その後に実際の工事が行われます。

また、日本には全国で64万箇所以上の土砂災害危険箇所があると言われていますが、近年の豪雨災害の頻発化や大規模化を受けて、より早期に災害の発生を検知し、迅速な避難を誘導するシステムなど、最先端のデジタル技術を駆使した防災対策への必要性が謳われています。

そこで今回は、土砂災害対策の最前線で取り組まれている、AI(人工知能)やIoTを駆使した最新の事前防災技術等について、いくつかをご紹介したいと思います。

地すべりや崖崩れの危険を3次元で可視化/地盤3次元化技術

3次元電気探査システムFullWaver
ドローン空中電磁法探査
ドローン空中電磁法探査で可視化した3次元地質構造

3次元物理探査とは、電気や微小な振動などを用いて地盤の内部を3次元で可視化する最新技術です。斜面の内部を可視化することで、地すべりを引き起こす危険性のある地質構造や地下水の状況を把握し、確実かつ効率的な防災対策工法を選択することができます。

隠れた土砂災害の危険箇所をAIで抽出~ハザードマッピングセンサソリューション

最新の多点設置型IoT傾斜センサ「クリノポール」。AIが抽出した土砂災害危険箇所に設置する

エッジコンピューティングやLPWA、IoT、クラウドを組み込んだ最新のネットワーク技術を駆使した防災センサです。斜面に多点で設置することで、土砂災害の発生を面的、広範囲、リアルタイムに監視します。地質調査および防災・減災の専門的知見を組み込んだAIがセンサの置箇所を、短時間で抽出します。

斜面リスクレポート

日本全国の危険斜面のリスク情報を簡易に入手できるレポートサービスです。日本全国の地質・地形データベースと斜面災害メカニズムに関する技術的知見が組み込まれ、土砂災害のリスクを知りたい箇所を地図上で選択すれば、その周辺エリアの斜面リスクが自動で診断されます。

いかがでしたでしょうか。

土砂災害から命を守る技術や仕事は、私たちの社会にとって重要なものですが、なかなか知られていないことが数多くあります。本コラムが少しでも防災・減災について知るきっかけとなれば嬉しいです。

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