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コラム

国土の防災・減災力を高めるグリーンインフラへ高まる期待

2022.03.28

昨今、メディアなどでよく耳にするようになった"グリーンインフラ"。自然環境の持つ多様な機能をまちづくりや防災などに活かしていこうという考え方で、様々な社会課題の解決に繋がるものとして、今、期待されているキーワードの1つです。

グリーンインフラとは?

グリーンインフラとは、自然環境がもつ機能を活用して、都市の居住環境を向上したり、防災・減災力を高めたりしていこうとする新たなインフラ整備の考え方です。欧米を中心に取り組みが推進され、日本においても導入の動きが加速しつつあります。

具体的には、森林を整備することによって自然災害を軽減したり、都市緑化によってヒートアイランド現象を抑制したりするなど、防災・減災に活用するとともに、緑によって景観を改善し、生物多様性に富んだ暮らしよい街を作っていくといった取り組みです。

保安林を整備する森林の持つ保水力や土砂の流出を食い止める能力を水源涵養や防災に役立てる。
都市の雨水浸透性を高める豪雨時に河川への流入量を減らすことによる水害対策やヒートアイランド対策のための緑化促進に活かす。
都市空間に緑や水を増やす緑化を促進することで魅力ある都市空間や快適なオフィス空間を創り出す。
生活空間に緑や水を増やす自然の営みを視野に入れた川づくりで身近な生態系として河川域を整備し、環境教育の場としても活かす。

単なる自然保護や環境に優しいということだけでなく、自然の持っている機能を積極的に活用していこうというところがポイントです。その対比として従来のコンクリート等により整備されたインフラのことを「グレーインフラ」と呼ぶこともあります。

コンクリートによる人口構造物は時とともに老朽化しますが、グリーンインフラは自律的に維持しようとする自然の仕組みも備えています。また、生態系がもともと備えている資源循環の仕組みを活用できれば廃棄物や資源リサイクルの点でもメリットがあります。

グリーンインフラは、グレーインフラと組み合わせ、双方のメリットをうまく活かすことで、より高い効果が得られると期待されています。

水源を涵養し土砂の流出を防ぐ森林そのものもグリーンインフラと言えます。

なぜ注目?グリーンインフラ

グリーンインフラの概念はアメリカにおいて発案され、その取り組みは欧米で先行しています。ただし、米国では都市緑化により雨水管理機能を高め、下水道管などの整備や維持管理コストを縮減するといった目的であるのに対し、欧州では生物多様性から得られる恵み(生態系サービス)を享受する戦略的な国土形成・景観設計の手法といった考え方であり、その取り組みは一様ではありません。ただし、このような欧米の動向を受けて、気候変動枠組条約や生物多様性条約など国際会議においてもグリーンインフラ推進への期待が述べられています。

今、日本で行われていること

日本でも、このような国際的な動向を受けて、平成27年度に閣議決定された国土形成計画や第4次社会資本整備重点計画において、グリーンインフラの取り組みを推進することが盛り込まれました。また2020年3月には「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が設立され、産官学が一体となって、グリーンインフラを社会に取り入れていく取り組みが行われています。

応用地質のグリーンインフラ技術

1. 樹木の総合診断・管理サービス

台風などによる強風災害の増加により、街路樹などが倒壊する被害が多発しています。街路樹は、都市に緑の景観をもたらし、健康で豊かな暮らしのために不可欠なインフラですが、倒木等により付近を通行する人や車両に危険を及ぼすことがあります。

当社が提供する樹木の総合診断・管理サービスでは、小型レーダー装置を用いて樹木内部を非破壊で可視化し、倒壊を引き起こす恐れのある弱った樹木を調べる技術です。樹木内部の空洞や腐食の状態を、木を切り倒さずに早期に見つけ、美しく、また災害に強い街路樹の保全を支援します。

樹木の内部を可視化する小型レーダー装置1
樹木の内部を可視化する小型レーダー装置2
腐朽菌などにより空洞ができると倒木などの危険性が高くなる
レーダーで可視化した樹木内部の空洞

2. 流域環境の保全を通じたグリーンインフラ開発

釧路湿原では、経済活動の拡大により、湿地が乾いた土地になってしまう陸化や水質悪化が進行し、また、湿原から河川の氾濫時に溢れた水を一時的に留めることができる遊水機能が失われたことで、洪水の発生などが課題となってきました。

当社では、水文調査の結果をもとに、流域の水文地質を3次元でモデル化し、流域全体の水循環を明らかにするとともに、湿地回復のための対策の提案も行いました。その結果、湿地が徐々に回復し、湿原由来の動植物も回帰するようになってきました。湿地が持つ遊水機能が回復することで、洪水などのリスク低減にもつながることが期待されます。

応用地質の湿地保全を通じたグリーンインフラの取り組み

3. 災害に強い森林づくり支援サービス

戦後に大量に植林された杉やヒノキなど針葉樹の人工林は、根が浅く地盤が脆弱であり、大雨などで土砂災害が起こりやすくなります。一方、根が地中奥深く伸びる直根を持った樹木は、土砂などによって流されることがなく風雨に堪え、また根を地中に張り巡らせることで地盤をさらに強固にします。

当社では、美しく、また災害に強い森林づくりのための各種のサービスも提供しています。

根が強く地盤を強固にする森林再生技術
根が強く地盤を強固にする森林再生技術
ICTにより効率的な林業を支援する森林クラウドサービス

応用地質のグリーンインフラサービス

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