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土砂災害警戒区域等エリア内であっても、2割の人は「何もしない」と回答 ~土砂災害に対する危機感や避難行動に関する意識調査 パート2~

2021.12.10

近年、観測史上初とも言われるような大雨に見舞われるなどの異常気象が多発し、それに伴い「土砂災害」に関する報道を目にする機会が増えています。そこで今回、応用地質では、土砂災害に関する現在の課題および今後の防災の在り方を考えていく目的で、「土砂災害に対する危機感や避難行動に関する意識調査」を実施しました。

「土砂災害に関する意識の有無」「警戒避難情報が発せられた場合に避難するかどうか」などの調査結果は、パート1をご覧ください。

危機感を持って行動する為に必要なことは、住民同士の声がけやリスクの可視化

メディアを通じて出される避難情報以外に、あなたが危機感を持って行動する為にどのようなことが必要だと思いますか?

避難情報があっても避難しないという人も多くいる中、危機感を持って行動する為には、やはり「近所の住民どうしの声がけ (42.7%)」が必要だと考える人が最も多い結果でした。地域のつながりが希薄化する中、防災の観点からは、地域のコミュニケーションの活性化も大きな課題となることが考えられます。

その他、危険を正しく認識し、行動するために、行政による、よりきめ細やかな情報提供や、防災センサーやアプリが有効と感じている方も多いようです。

2割以上が自身の家であっても土砂災害警戒区域に該当しているかどうか、「関心があるがわからない」、また約1割が「関心がなくわからない」と回答

ご自身もしくは親族の家は、実際に土砂災害警戒区域等の指定エリアに該当していますか?

※「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」に基づき、土砂災害のおそれのある区域。自治体がハザードマップ等で公表。

「自身、もしくは親族の家が土砂災害警戒区域の指定エリアに該当しているか」という質問には、自身の家が該当もしくは該当していないことを把握している人が6割近く、親族の家についても4割強が把握しているとの結果が得られました。一方で「関心はあるが該当しているかわからない」「関心がないので該当しているかわからない」など、自身の家であっても土砂災害の危険性について積極的に情報を得ようとしていない人も一定の割合で存在していることが明らかになりました。

土砂災害警戒区域等エリア内であっても、2割は「何もしない」

あなたご自身もしくは親族の家が、土砂災害警戒区域等に設定されていた場合、どうしますか?あなたご自身もしくは親族の家が、土砂災害警戒区域等に実際に指定されている場合は、あなたの行動で当てはまるものをお選びください。

「豪雨時にはこまめに災害警報等の情報を確認する (45.4%)」、「避難所や避難経路を日頃から確認する (39.6%)」など、自身や親族の家が危険なエリアにあるとわかっている場合には、多く方が減災のための行動をとる意識があることがわかりました。

一方で、危険なエリアにあるわかっていても、約2割は「何もしない」と回答しています。昨今の自然災害においては避難行動を取らなかった人が被災する「逃げ遅れ」が防災上の大きな課題となっています。「逃げ遅れ」をできるだけ少なくするために、災害を「正しく知り」、「正しく恐れ」、適切な行動を促すソフト対策の充実が重要となる可能性があります。

土地購入(入居時)約半数が「土砂災害について意識せず検討もしなかった」と回答

ご自身もしくは親族の家の土地購入時(借家の場合は入居時)に、地盤の安全性について検討したことはありましたか?あなたが行ったことがあるものをお答えください。

土地等を購入する場合、「自分でハザードマップなど調べた」と回答した人が半数近くいるなど、土地選びにハザードマップなどのリスク情報の活用が浸透しつつある状況がわかった一方、同じく半数近くが「土砂災害について意識せず検討もしなかった」と回答するなど、土砂災害の危険については事前に全く検討もしていないケースが多いこともうかがえました。

近年は、豪雨災害をもたらす大雨の頻度が増加し、また豪雨時に一度に降る雨量も今までに経験のない水準となるなど、過去に比べて土砂災害の危険性がより高まっています。都市部など、これまで一度も斜面崩壊を起こしたことがないような場所でも災害が発生する可能性もあり、土砂災害ハザードマップなどのリスク情報の充実と活用がより重要になってくると考えられます。

まとめ

「自身や親族が、丘陵地や斜面を造成した土地やそれらに隣接している場所にお住い」の人への調査を通じ、土砂災害に対する意識や避難行動に対する考えなどの実態を調べました。

本アンケートでは、普段から「自分は大丈夫」と考えている、あるいは危険の認識はあるものの行動が伴わないといった方が一定数いる実態がわかりました。そのような中で、危機感を持って行動するために必要なこととして、「近所の住民どうしの声がけ」、「行政によるきめ細かな防災情報の提供」、「近隣に防災センサや警告灯など、リスクを可視化できるものを設置」等、これからの防災・減災に求められる取組みのヒントも得られました。

-本調査概要-
調査時期 2021年9月16日~9月21日
調査対象 20歳~69歳 男女1000名
(自身の家または親族の家が、丘陵地や斜面を造成した土地の上、もしくはそのような場所に隣接している方)
調査手法 インターネットによるアンケート調査

※調査結果・データは四捨五入しており、合計パーセンテージが100%にならない場合がございます。

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