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調査・リサーチ

約6割の人が直近1年で土砂災害に対する意識の変化を感じていると回答 ~土砂災害に対する危機感や避難行動に関する意識調査 パート1~

2021.12.10

近年、観測史上初とも言われるような大雨に見舞われるなどの異常気象が多発し、それに伴い「土砂災害」に関する報道を目にする機会が増えています。そこで今回、応用地質では、土砂災害に関する現在の課題および今後の防災の在り方を考えていく目的で、「土砂災害に対する危機感や避難行動に関する意識調査」を実施しました。

約6割の人が直近1年で土砂災害に対する意識の変化感じている

この1年で都市部でも土砂災害が増えていますが、土砂災害に関して、ご自身の意識は変わりましたか?

「この1年で、少し身近な問題として考えるようになった (35.4%)」、「この1年で、危機意識が高まり、自分事として考えるようになった (24.1%)」の合計59.5%の人が、土砂災害を「自分の身近な問題」として考えるようになったと回答しています。熱海での土石流など、全国各地で頻発する土砂災害をきっかけに危機意識が高まったことがうかがえます。一方で、「以前から特に危機意識は持っておらず、この1年も特に変わらない」と回答した人が24.1%いることもわかりました。

危機意識を持っている人の半数以上が「ハザードマップを確認した」と回答するも、15.3%は「特に何もしていない」

土砂災害に関して、実際に起こした行動はありますか?

危機意識を持っている人に、土砂災害に関して実際に起こした行動を質問したところ、半数以上が「土砂災害ハザードマップを確認した」と回答し、「地域の避難場所を確認した (42.6%)」「自治体のWebサイトを見た (39.0%)」「災害保険の見直し (18.1%)」が続きました。万が一、自身の住んでいるエリアで土砂災害が起きた時に備えて具体的な行動を起こしている人が多いことがわかりました。一方で、「特に何もしていない」人も15.3%おり、危機意識を持っていても具体的に何をすればいいかわからない人も一定数見受けられました。

約7割が避難に関する警戒レベルの「内容はよくわからない」、「知らない」と回答

令和3年5月に避難情報に関するガイドラインが改定され、警戒レベルや避難情報の名称等が変更になりましたが、5段階の警戒レベルをご存知ですか?

5段階の警戒レベルについて「よく知っている」と回答したのは約3割に留まり、約7割の人が「聞いたことはあるが内容はよくわからない」、「知らない」と回答しました。

適切な避難を促すガイドラインの改定ですが、市民レベルではまだ十分に浸透せず、理解が追い付いていない現状が浮き彫りになりました。

約4割は土砂災害警戒避難情報が発せられても「避難しない」

大雨による土砂災害警戒避難情報があなたの居住する地域に発せられた場合、あなたは避難しますか?

避難について質問したところ、大雨による土砂災害警戒避難情報が居住する地域に発せられた場合でも「避難しない」という回答が約4割にのぼりました。危険が迫っていても、実際に避難行動を起こさない人も多いようです。次項でその理由についての調査結果がでています。

避難しない理由:3人に1人が「自分の家は大丈夫だと思っている」

あなたは「大雨による土砂災害警戒避難情報があなたの居住する地域いに発せられた場合、避難をしない」とお答えになりましたが、その理由は何ですか?

避難しないと回答した人に理由を聞いたところ、約3人に1人が「自分の家は大丈夫だと思っているから」と回答しました。「面倒くさいから (15.9%)」、「実際に自宅や近所が被災しないと現実味がないから (10.9%)」の回答もあり、自分事として危機感を捉えにくい実態もあるようです。

また、「避難するタイミングがわからないから (14.6%)」、「どこに避難していいかわからないから (11.4%)」といった回答からは、適切な情報伝達の在り方についても課題があることがうかがえます。

まとめ

「自身や親族が、丘陵地や斜面を造成した土地やそれらに隣接している場所にお住い」の人への調査を通じ、土砂災害に対する意識や避難行動に対する考えなどの実態を調べました。

全国各地で頻発する土砂災害に関する報道なども影響し、土砂災害への危機感や避難に対する意識も高まっている状況が把握できた一方、国が今年5月に改定したガイドラインによる5段階の警戒レベルについて、約7割が内容もしくは存在自体も知らないという結果が出るなど、防災情報の周知・浸透にはまだ課題が残っていることも浮き彫りになりました。避難をしないことで災害に遭遇する「逃げ遅れ」が問題となる中、災害リスクをある程度把握していても行動しない人が一定割合いることもアンケートから明らかになりました。

「危機感を持って行動するためにどのようなことが必要だと思っているか」「自身の家が土砂災害警戒区域等の指定エリアに該当しているかどうか」などについての調査結果は、パート2をご覧ください。

-本調査概要-
調査時期 2021年9月16日~9月21日
調査対象 20歳~69歳 男女1000名
(自身の家または親族の家が、丘陵地や斜面を造成した土地の上、もしくはそのような場所に隣接している方)
調査手法 インターネットによるアンケート調査

※調査結果・データは四捨五入しており、合計パーセンテージが100%にならない場合がございます。

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