はなごよみ

9月の花

ヒオウギ

ヒオウギ(アヤメ科)
学名 Belamcanda chinensisa

 山地の草原に生えるアヤメ科の多年草「ヒオウギ」を紹介します。
 高さ40〜60cmの花茎の先が枝分かれし、それぞれにオレンジや黄色の地に赤い斑点が入り花被片6枚からなる径4cm程の花をつけます。  「ヒオウギ」の名は、剣状の葉が扇形に並び桧扇に似ているので付けられたと言われています。
 図鑑では原産地は日本、中国、台湾、インド、国内では本州以南と言うことですが、東北の山地草原では見たことがありません。
 写真に、つぼみ、開いた花、渦巻き状の萎んだ花が一緒に写っていることからお分かりになるように、次々と1ヶ月間ほど咲き続けます。


8月の花

ハマナス

ハマナス(バラ科)
学名 Rosa rugosa

 海岸の砂地に生育するバラ科の植物「ハマナス」を紹介します。
 ハマナスは、野生のバラの仲間では最も大きな花を付けることで知られています。「ハマナス」の名の由来は果実をナシに例えた「浜梨」が東北地方でなまってハマナスになったといわれています。生育地は北海道から本州の太平洋側では茨城県、日本海側では島根県までとなっています。特に茨城県鹿島郡大野村、鳥取県鳥取市白兎・西伯郡中山町松河原では、ハマナスは生育の南限地として国の天然記念物にも指定されています。


7月の花

イワタバコ

イワタバコ(イワタバコ科)
学名 Conandron ramondioides

 イワタバコは、初夏から夏にかけて花茎を伸ばし、紫色で星形の花を咲かせる多年草です。岩壁に生え、葉が大きく、タバコの葉に似ていることからこの名前がつきました。写真では葉が大きく写っていませんが、これは岩壁に生えているイワタバコを下から見上げるように撮影したためです。正面から見ると、大きな楕円形の葉が垂れ下がるように生えています。
 また、イワタバコは観賞用にも栽培され、白花や桃花などの品種があるそうです。


6月の花

ハナイカダ

ハナイカダ(ミズキ科)
学名 Helwingia japonica

 ハナイカダは樹林の林床で普通に見られる落葉低木です。
 普段は割と地味な植物で、これといった特徴はないのですが、じつは葉の真ん中に花が咲き、実がなるという不思議な木なのです。花や実がない時期は、(この木なんの木だろう)と考え込んでしまうのですが、花が咲く6月であれば、こんなにわかりやすい植物はありません。葉の上で花が咲くのは、花をつける軸が葉の中央脈とくっついてしまったためらしいのです。


5月の花

フタリシズカ

フタリシズカ(センリョウ科)
学名 Cholranthus serratusa

 木々が葉を繁らせ緑に染まり一段落ついた頃、光が射し込まない林下で、フタリシズカは小さな白い米粒のような花を咲かせます。この花は少し変わっていて、白く見えるのが雄しべで、写真では判りませんが内側に1本の雌しべを包み込むように咲いています。つまり、花びらも萼もない花ということです。
 また、この花が実を結ぶのと並行して、閉鎖花と呼ばれるつぼみのようなものをつけます。この閉鎖花は、開花せず、アリに運ばれるまで待つか、落下するまで植物自体についているそうです。
 ところで、フタリシズカ(漢字では「二人静」と書きます)の名は、花をつけた2本の軸を静御前(しずかごぜん)とその亡霊の舞姿にたとえてつけられたそうですが、実際には軸が1本だったり、3〜5本あったりとまちまちです。


4月の花

ネコヤナギ

マンサク(マンサク科)
学名 Hamamelis japonica

 早春のモノクロの樹林で、他の植物に先立ち鮮やかな黄色の花を咲かせるのがマンサクです。山の落葉樹の中で最も早く花を咲かせるので、‘まず咲く’が変化してマンサクと呼ぶようになったといわれています。
 早春に開花する植物は、葉が出る前に花を咲かせるものが多いため、その美しさが際だちます。代表としてはソメイヨシノやコブシ、モクレン等があり、どれも春の訪れを感じさせる花です。マンサクも葉をつける前に、たくさんのねじれた紐(ひも)状の花弁からなる花を咲かせ、その花はなにやらエネルギーが満ちあふれ、不思議な力が宿っているように見えます。また、マンサクは稲作の吉凶を占う植物ともいわれており、花がたくさん咲いた年は豊作だそうです。


3月の花

ネコヤナギ

ネコヤナギ(猫柳)(ヤナギ科)
学名 Salix gracilistyla

ネコヤナギは河原等の水辺に生育する低木で、この時期には、銀白色に輝く花芽が人目を誘います。ネコヤナギといえば、写真のような銀白色の花芽のイメージが一番強いかと思いますが、雄花の場合(ネコヤナギには雄花と雌花がある)、もう少し暖かくなると絹毛の間から紅色の葯が伸びて紅色になり、さらに葯から花粉がこぼれると淡黄色へと変化します。この頃にはネコのような絹毛もなくなっています。ネコヤナギの雄花が黄色になると春の到来です。


2月の花

ツルウメモドキ

ツルウメモドキ(ニシキギ科)
学名 Celastrus orbiculatus

ツルウメモドキは名前の通りつる性の植物で、ウメモドキという別の植物に似ているため、その名がつきました。
5〜6月に黄緑色の小さい花を咲かせ、秋に黄色い実をつけます。実は熟すと果皮が3つに裂け、中からオレンジ色の種子が現れます。写真に写っているのがそのオレンジ色の種子です。種子は冬になっても鮮やかなオレンジ色を保っているため、冬の雑木林等ではひときわ目立った存在となっています。
今回の写真は冬の現場で撮影したものですが、このときも殺風景な草原の縁に、鮮やかなツルウメモドキの種子が映えていました。


1月の花

ロウバイ

ロウバイ(蝋梅)(ロウバイ科)【植栽】
学名 Chimonanthus praecox

この季節になると緑は少なくなり、さみしくなります。そんな中、心を温めてくれる植物があります。遠くから見ると黄色の実のように見えますが、近づいて見ると小さなつぼみで、みずみずしい花を咲かせます。ロウバイの花です。ロウバイは12月下旬から3月上旬にかけて黄色い花を咲かせます。
ロウバイの名前の由来は、花弁がロウ細工のように油を含んで半透明色であることから、臘梅(ろうばい)と呼ばれるようになったと言われています。乾燥したロウバイの花は茶剤とされ、また、解熱、鎮咳薬に利用されるそうです。