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地震による経済被害推計に関する研究 ~福島県沖の地震を対象とした操業能力の回復過程のモデル化に関する検討~

2025.06.26

要旨

地震に対する備えは、地震が発生した場合の個人の生命の安全、財産の保全だけでなく、地域の社会・経済活動を担う産業部門に対する地震の影響を考えることが重要である。そのためには地震による経済被害推計が必要となる。地震による経済被害の推計ができれば、被災地の社会・経済活動へ与える影響や被災地外への波及の可視化、地震被害がもたらす財政への影響のほか、減災策を実施した場合の経済的効果等、事前・事後の様々な場面での利活用が考えられる。

地震による短期的な経済被害推計の基本的な枠組みは梶谷ほか (2013) やTatano and Kajitani (2021) により示されている。本研究では、これら経済被害推計の枠組みの中の企業の操業能力のリカバリーカーブ (発災からの経過時間と復旧確率の関係) を、2022年福島県沖の地震の被害データから推定した。具体的には、セミ・マルコフ過程を利用してライフライン復旧期間を考慮した操業能力のリカバリーカーブを推定した。本手法の特徴は、停電・断水・断ガスの復旧期間が反映可能な点にある。なお、本稿はセミ・マルコフ過程の滞在時間分布を状態毎に独立に推定してリカバリーカーブをモデル化した清水ほか (2023) に関し、滞在時間分布のパラメータを同時推定することによりモデルの改善を図ったものである。

本手法を適用することで得られるリカバリーカーブは、地震による経済被害推計のほか、事業中断リスクの定量化、事業継続計画における目標復旧時間の設定、水道感の耐震化による事業所の操業能力のリカバリーの早期化等の評価が可能であり、企業・自治体の様々な場面におけるリスクマネジメントへの活用が期待される。

参考文献
梶谷義雄,多々納裕一,吉村勇祐 (2013):大規模災害時における産業部門の生産能力の推計- 東日本大震災を対象として,自然災害科学,Vol.31,No.4,pp.283-304.
Tatano, H., Kajitani, Y. (2021) : Methodologies for Estimating the Economic Impacts of Natural Disasters (Integrated Disaster Risk Management), Springer. (ISBN: 9811627185)
清水智,山崎雅人,井出修,劉歓,梶谷義雄,多々納裕一 (2023):ライフラインの復旧期間を考慮した地震後の操業能力に関するリカバリーカーブ ―2022 年福島県沖の地震を例に―,土木学会論文集,Vol.79,No.20,論文ID:23-20019.

著者 清水 智
(応用地質株式会社 共創Lab)
山﨑 雅人
(応用地質株式会社 共創Lab)
井出 修
(応用地質株式会社 共創Lab)
劉 歓
(京都大学防災研究所 特定助教)
梶谷 義雄
(香川大学創造工学部 教授)
多々納 裕一
(京都大学防災研究所 教授)
発行年月 2025年6月
言語 日本語
ページ数 21
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応用地質株式会社 共創Lab 清水 智 shimizu-satoshi@oyonet.oyo.co.jp
応用地質株式会社 共創Lab 山﨑 雅人 yamazaki-masato@oyonet.oyo.co.jp
応用地質株式会社 共創Lab 井出 修 ide-osamu@oyonet.oyo.co.jp

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