気候変動、自然災害の増加、少子高齢化、インフラの急速な老朽化、資源・エネルギー問題など、私たちは今、様々な社会課題・環境課題を目の当たりにしています。しかもこれらの課題は、社会・経済構造の高度化とともに、相互に複雑に絡み合い、各企業が保有する既存技術やサービス、あるいは行政のみの対応では、解決が困難になりつつあります。

応用地質グループでは、このような社会課題に対する包括的なソリューションを生み出すべく、2018年に策定された前中期経営計画『OYO Jump18』において、異業種を含むグループ内外の企業や機関との連携を明確に志向しました。また、現中期経営計画『OYO ADVANCE 2023』においてもDXを核としたイノベーション戦略を策定するとともに、他企業や行政、大学機関との共創を前提とした事業サービス改革を推進しています。

現在、世界各国の政府機関や企業などが、『持続可能な開発目標SDGs』の2030年までの目標達成を掲げ、様々な取り組みを展開しています。このSDGsの目標達成のためには、業種や組織の壁を超えたオープンイノベーションによる課題解決策の創出が欠かせません。

本パネルでは、オープンイノベーションによって社会・環境課題を解決し、SDGsの目標達成をめざす応用地質グループの取組みの一部を紹介いたします。

防災コンソーシアム『CORE』

異業種連携

応用地質は、東京海上日動火災保険(株)など14社とともに、防災コンソーシアム『CORE』を2021年11月に発足しました(現在は57社が参画)。気候変動等の影響により自然災害が増加・激甚化している現状を踏まえ、業界の垣根を超えて技術を融合し、災害に負けない強靭な社会の形成を目的として、「国土強靭化基本計画」に沿った防災・減災の新しい取り組みを加速・促進する新たなサービスの創出・市場展開などの具体化を目指していきます。

また、『CORE』の分科会活動として、現在、当社を主幹企業とし、東京海上日動火災保険(株)、セコム(株)、(株)パスコとともに、『リアルタイムハザードマップ』の開発を進めています。リアルタイムハザードマップは、防災IoTセンサやSNSなどから取得するリアルタイム情報に加え、既存の防犯カメラ等の映像から発災の予兆や状況を捉えるAI等を活用し、住民や企業が災害の到来をリアルタイムに実感し、「逃げ遅れゼロ」や「被害の極小化」の実現をめざすシステムです。

  • リアルタイムハザードマップイメージ
  • 防災科学技術研究所の大型降雨実験施設での防犯カメラ映像・防災IoTセンサの実証実験の様子

神奈川県葉山町との防災まちづくりに関する連携協定

官民連携

気候変動等の影響により、全国で豪雨による被害が増加しています。神奈川県葉山町内においても近年は急傾斜地の崩壊など土砂災害の発生が懸念されているため、葉山町と応用地質は、土砂災害から住民を守る新たな防災システムの構築を目的に連携協定を締結し、実証研究を開始しました。応用地質が開発した「斜面変動検知センサ」と「土砂ハザードモニタリングシステム」を葉山町における土砂災害危険斜面に設置・運用し、土砂災害の予兆の早期検知の有効性を検証するとともに、検知した予兆情報をもとに住民の適切な避難行動につなげるための最適な周知方法の確立等を目指しています。

生物多様性のための産官民有志連合“30by30”アライアンスへの参画

産官民連携

当社は、2030年までに陸と海の30%以上を自然環境エリアとして保全する目標「30by30 (サーティーバイサーティ)」の趣旨に賛同し、「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加いたしました。

「30by30」とは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際目標です。「生物多様性のための30by30アライアンス」は、30by30目標の国内達成を図るため、環境省を始めとする産官民の有志連合として設立されました。

当社はこれまで、自社で運営する「応用生態工学研究所」にて、ダムや河川流域の生態系変化についての調査研究を継続的に行っているほか、インフラ整備に伴う自然環境への影響調査・対策のコンサルティングや、環境DNAを用いた外来魚種の調査・生態管理、非破壊探査技術を用いた樹木の健全性診断、中央アジアにおける乾燥地緑化技術の普及など、本業を通じた生物多様性の保全活動にも積極的に取り組んできました。

当社は、このような取組みで培ってきた生物多様性保全に資する最新技術・知見を活かし、本アライアンスへの参加を通じて、30by30の国内目標達成と持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

電気ショッカー船での外来魚の生態調査・管理

樹木の健全性診断技術

保育ブロック技術による荒廃地緑化

共創Lab

産官民連携

気候変動や自然災害の頻発化、デジタル技術による経済・産業構造の変革、パンデミックによる生活習慣の一変・・・。私たちを取り巻く環境は急速に変化しています。他方、社会・経済の仕組みが複雑に絡み合い、自然災害等の影響は多方面に波及するようになりました。これは、局所的対応では、もはや問題が解決できない時代に入ったことを意味します。

このような社会変革の時代においては、物事を多面的に評価・分析し、統合的な課題解決手法の開発が必要と考え、当社は2022年4月に「共創Lab」を発足しました。

共創Labは、大学等の研究機関と連携し、オープンイノベーションを軸とした研究体制で活動し、ソリューションの開発と社会実装を目指します。

研究テーマ

① パースペクティブ(予測的)アプローチに基づく地域・社会課題の解決にむけた研究

現在起きている未曽有の事象から将来起こりうる課題を予測。それらの課題に対ししなやかに対応できる社会・経済のあるべき姿を設定し、そこに向けてバックキャスト手法で対策を研究・開発

② 統合的・多面的アプローチによる課題解決手法の開発

従来の単一的・局所的対応に替わり、多面的な分析・評価に基づく統合的な課題解決手法の開発
例)自然災害が現代の複雑化した社会・経済に及ぼす被害の統合的予測手法の社会実装等

共創Lab特設サイト共創Lab特設サイト
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応用地質×日立製作所 地中可視化サービス

異業種連携

当社と株式会社日立製作所は、上下水道、ガス、電気、通信などインフラ事業者や施工・設計業者向けに展開中の「地中可視化サービス」を強化し、クラウドを活用した新たなオンデマンドサービスとして提供を開始しました。地中のガス管や水道管といった埋設物の位置や寸法などを高精度に可視化・一元管理し、地下掘削工事などで必要となる埋設物情報を提供します。今回の強化では、これまで行ってきた地下レーダー探査の評価検証を踏まえて、解析技術のさらなる精度向上を実現したほか、クラウドサービス(SaaS)化により必要な時に必要な場所の埋設物情報をオンデマンドで提供可能としたものです。広範な管路新設や更新時の計画・設計・施工の効率化や、埋設管の損傷事故防止、工期遅延の発生リスクの低減など、社会インフラの維持管理業務の高度化が期待できます。

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応用地質×BCT総研 脱炭素・持続可能な地域まちづくり

異業種連携

国は2050年カーボンニュートラルを実現するために、そのための温室効果ガスの削減目標を2030年度までに2013年度比で46%削減、さらには50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。

また、2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念として、2021年には「地球温暖化対策の推進に関する法律」が改正され、地域の脱炭素化に向けたロードマップとして、2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」をつくる計画としています。

一方、わが国では、少子高齢化や人口減少、地域財政の悪化、インフラの老朽化、自然災害の増加など、地域の持続可能性を脅かす様々な複合的な課題が存在しています。脱炭素や循環型経済、分散型社会の実現のためには、これらの課題も同時に解決していく必要があります。

応用地質と BCT 総研は、応用地質グループの保有する再生可能エネルギーのポテンシャル評価技術や、温暖化に伴う災害確率算定手法、人口動態・ハザード・インフラなどの各種データベースや、BCT総研の保有するバックキャスティング手法を用いた地域の未来デザイン、温室効果ガス削減コンサルティング等を組み合わせ、脱炭素・持続可能な地域づくりに向けたソリューションの開発を目指しています。