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共創Lab設立の背景

気候変動や自然災害の頻発化、デジタル技術による経済・産業構造の変革、パンデミックによる生活習慣の一変。私たちを取り巻く環境は急速に変化しています。

他方で社会・経済の仕組みが複雑に絡み合い、自然災害等の影響は多方面に波及します。これは局所的対応では問題が解決できない時代に入ったことを意味します。

社会課題の解決に向けて、物事を多面的に評価・分析し、統合的な課題解決手法の開発が必要とされています。このような背景を受けて共創Labは2022年度より発足しました。

共創Labは、大学等の研究機関と連携し、オープンイノベーションを軸とした研究体制で活動します。研究成果は、学会等での論文発表やメディアを通じた公表などにより社会に広く発信・提言します。またOYOグループは、研究成果をサービス・ソリューションに昇華させ、社会実装を目指します。

現在の研究体制

大学等と密接に連携した研究体制により、最新の学術的知見を吸収しつつ、実践的な課題解決手法の開発を目指します。

研究テーマ

共創Labでは、研究課題を「実装化重点研究」と「パースペクティブ研究」に分類しています。

■実装化重点研究
重点的に研究を行い、短期間で研究成果を出し、社会実装につなげていく研究です。現在の実装化重点研究課題は、自然災害の経済被害予測手法の高度化です。高精度のストック被害額推計手法、観測データに基づく企業の災害復旧プロセスのモデル化、応用一般均衡モデルによるフロー被害額の推計研究が選定されており、大学等との連携により先端的研究が進んでいます。

■パースペクティブ研究
将来の社会課題を展望し、バックキャスティングアプローチにより課題解決の方法を研究します。現在の研究課題として、リスクコミュニケーションに関する研究、地域社会の持続可能性に関する研究、2030年代の社会課題予測研究、Wellbeingに関する研究等が設定されています。

関東大震災から
100年を前にして

関東大震災に学び、再来に備える

関東地震再来の経済被害を推計し
公表しました

来年で関東大震災から100年になります。その間、建築基準法の制定、地震観測網の整備、家計向け地震保険制度の整備など、ハード・ソフトの両面で地震に対する備えは各段に向上しました。一方、東京やその周辺地域の人口は大きく増加し、産業構造も変化しました。

共創Labでは、関東大震災と同じ地震が発生したら、どのような経済被害が発生し、我々はどのように備える必要があるのか、震災から100年を前に検討を開始しました。

現在までに、①1923年に発生した関東大震災の被害の概況、②2020年代の今、同じ地震が発生した場合における経済被害額、③学ぶべき教訓をまとめたワーキングペーパーを作成しました。ワーキングペーパーは応用地質株式会社のホームページからダウンロードできます。

ワーキングペーパーでは、民間企業の被害を中心にマクロ的に試算したものです。現在は1923年当時とは異なり、サプライチェーンが全国に張り巡らされ、被災地以外への震災の影響も見込まれます。今後の企業の皆様の地震対策への一助となれば幸いです。

関東大震災から100年を前にして
分析の詳細はワーキングペーパーをご参照ください

民間企業資本ストックの被害推定

地震動による被害を想定し(地震後火災は対象外)、50mメッシュ別産業別民間企業資本ストックの被害額を推定しました。地震動の分布は、中央防災会議による首都直下地震モデル検討会の推定データを利用しました。揺れの大きさと被害の関係は、過去の地震の被害データをもとに産業毎に設定した損失率曲線を用いています。推計によれば民間企業の資本ストックの被害額は約42兆円と推定されました。この被害額は阪神・淡路大震災,東日本大震災の民間企業のストック被害の7~8倍に相当します。

地震動の分布

空間応用一般均衡モデルによるフローの経済指標(GDPや産業活動)の予測

関東地震の再来で生じるストック被害だけでなく、GDPや産業の活動水準といったフローの経済指標に与える影響を経済モデル(空間応用一般均衡モデル)により推計しました。右図は地震発生から1年間で生じた都道府県別の域内総生産(GRP)の変化額(単位10億円)を示したものです。これを全国で合計した国内総生産(GDP)の変化額は最初の1年間で約61兆5千億円の減少となります。平時の年間実質GDPに比べ約11.2%の損失となり、深刻な経済ショックとなることが予想されます。

空間応用一般均衡モデルによるフローの経済指標(GDPや産業活動)の予測

空間応用一般均衡モデルは地域の産業の復旧プロセスもシミュレーション可能です。右図は東京都内の電子部品・デバイス産業の復旧プロセスです。地震発生後の設備復旧率(設備の能力)に生産が制限されます。さらに取引先の被災により、部品等が調達できず、実際の操業度は設備復旧率を下回ることが予想されます。

設備被害に加えて、サプライチェーン寸断などの自らでは制御できない要因により損失が拡大するリスクがあります。

地震対策を実施した場合の経済効果

シミュレーションでは、全ての企業が設備被害を1/3減らす地震対策を実施した場合の経済被害額も推計しました。その結果、サプライチェーン寸断が大幅に緩和され、地震後の1年間のGDP損失は半減することが明らかになりました。事業者それぞれが供給責任を認識し、サプライチェーンを迅速に復旧させるため地震対策を実施することが経済被害の観点からは重要です。

関連セミナーのご紹介

共創Labと最新の研究内容の詳細については、セミナーF「より高度な経済被害想定に向けて ~自然災害の活発化に対応した経済被害予測研究の最前線~」にて紹介しています。ぜひご覧ください。

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