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地震被害と地震規模

地震被害と地震規模

今回の地震は、地震規模(気象庁マグニチュードMj=7.3(暫定値))の割に被害が軽微であることが指摘されている。地震規模や地震動の強さを表すいくつかの指標を使って、既往の地震との比較から今回の地震について検討してみた。

■気象庁マグニチュードMjとモーメントマグニチュードMw
下図は武村(1998)による1885年以降の日本の内陸で発生した浅い(深さ20km未満)地震の気象庁マグニチュードと被害程度の関係に、今回の地震を追記したものである。被害ランクは宇津(1982)にしたがっている。被害ランク3は死者2人以上20人未満または全壊家屋2戸以上1000戸未満を意味しており、今回の地震の被害ランクは「3」にあたる。この図によれば、今回の地震は、過去の地震と比べてマグニチュードの割に被害が小さいことが判る。

気象庁マグニチュードと被害程度の関係図

気象庁は「余震発生状況から見ると6.9ぐらいが妥当」(毎日新聞、10/8朝刊記事より)として、再検討する方針を示している。ところで、気象庁が発表するマグニチュードMjは周期が5秒程度以下の地震波の振幅から決定されている。これに対し数10秒以上の長い周期の地震波を使って決定される「モーメントマグニチュード」は津波などの周期の長い現象までを含めた、地震全体の大きさを評価する指標として使われている。今回の地震のモーメントマグニチュードMwは、6.6程度と計算されており、兵庫県南部地震のMw=6.9と比べてエネルギー(おおむねモーメントに比例する)は4割程度だった。気象庁マグニチュードMjとモーメントマグニチュードMwは、計算に使う地震波の周期帯域が違う、つまりもともとの定義が違うので、MjとMwが異なった値を示すこと自体は不思議ではない。

下図には日本の内陸部で発生した地震のMjとMwを比較した。発生した地震波の違いによってMjとMwの関係はばらつき、今回のMj-Mw=0.7はばらつきの範囲に含まれ、特に今回の地震が特異であったとは考えられない。

Mj−Mw図

今回の地震の気象庁マグニチュードMjは兵庫県南部地震のMj=7.2より0.1大きいのに対し、モーメントマグニチュードMwは逆に0.3小さい。このことから建物被害が小さいことの原因を、モーメントマグニチュードが小さかった、すなわち地震のエネルギーが小さかったことと関連付ける考え方もあるが、一般の建物の固有周期は1秒以下のものが多く、Mwの小ささだけでは説明できない。Mjが大きかった原因については、解析に使った観測点の選定の問題や、周期5秒程度の地震波が特に優勢だったことが指摘されている。

■地震動の距離減衰
最大加速度の距離減衰特性から今回の地震を見てみると、下図に示すようにMj=7.3の場合のFukushima & Tanaka(1991)と良い一致を示しており、この面からも特異な点は見られない。

加速度の距離減衰特性

■スペクトル特性
地震被害と地震動の大きさの関係を考えてみる場合には、周期特性を考慮する必要がある。下図に示したのは防災科学技術研究所のK-net、KiK-netで観測された波形の加速度応答スペクトルと兵庫県南部地震の神戸海洋気象台でのスペクトル、1993年釧路沖地震の際の釧路気象台でのスペクトルを比較したものである。なお、釧路気象台の周辺では大加速度にもかかわらず周囲の被害は軽微だった。

5%減衰加速度応答スペクトルの比較図
応答スペクトルを計算した観測点

江府、伯太、日南のスペクトルは0.2〜0.3secにピークがあり、これより長周期側では一様に右下がりとなっていて、釧路気象台のスペクトルと似ている。建物被害に影響が大きい周期0.5〜1.0secでは神戸海洋気象台の記録より小さな値を示している。これらの観測点は、震源の近くに位置し、地表近くにまで岩盤が達している。これらの地域での被害の少なさは、短周期の卓越した地震波形だったことが原因と考えられる。新見は、震源の南南東約40kmに位置し、周囲から飛び抜けて大きな加速度を観測したが被害はほとんど報告されていない。スペクトルは0.2secにピークを持ち、これより長周期側では急激に小さくなっており、被害の少なさが理解される。

日野は防災科学技術研究所のネットの中で最大の加速度である926galを観測した地点である(住所は日野町下黒坂)。この波形から計測震度を計算すると7(小数表示で6.6)となる。応答スペクトルで見ると0.6秒付近にピークがあり、神戸のスペクトルと比べても大きい。しかし、日野市下黒坂地区では建築学会の調査(http://kouzou.cc.kogakuin.ac.jp/Saigai/tottori/report1.html)によると民家全ての危険度判定で2棟のみが赤ラベル(大破、危険)とされ、ほとんどは棟瓦が落ちた程度であった。観測地点を詳細に見ると日野町下黒坂地区の集落の北約2kmに位置する鵜ノ池のほとりに位置し、ボーリング柱状図によると深さ100mでもS波速度が790m/secと遅く、この地盤の影響で0.6secを中心として増幅されたものと推測される。詳細調査が必要だが、この軟弱層の厚い地盤が鵜ノ池の周囲にのみ分布すると仮定すれば、下黒坂地区の集落では江府、伯太、日南と同様の短周期の卓越した地震動だったために被害が少なかったものと考えられる。

米子の観測点は、深さ20mまでS波速度が100〜200m/secの層が堆積している。スペクトルは、神戸海洋気象台のスペクトルと形状が似通っていてレベルが小さい。最大加速度は384galと小さいものの0.5〜1.0secのレベルは他の観測点と同レベルであり、軽微な被害が発生したことが説明できる。

なお、境港市には気象庁の観測点があり、748galの加速度が観測されているが波形データを未入手のため検討できていない。

結論はより詳細な調査を待たねばならないが、マグニチュードの大きさに比べて被害が少なかったことについて、現時点で原因として考えられることを挙げておく。

・気象庁マグニチュードは、まだ未確定だが過大だった可能性がある。原因としては優勢な周期5秒付近の地震波形の影響が考えられる。
・震源断層が山中にあったため、地震波を増幅する軟弱地盤が震源付近には存在しなかった。このため加速度は大きくても構造物に被害を与える周期では地震動は大きくなかった。
・軟弱な地盤が存在する米子市、境港市は震源断層からやや離れていた。
・断層の破壊が中心から両側へと広がったため、神戸のように地震波が一方向へは集中しなかった。
・現地調査した範囲では、液状化は干拓地、埋立地などの人工地盤にほぼ限られていた。干拓地、埋立地の多くは農業用地、工業用地として使われているため、砂嘴上に位置する住宅は液状化の影響をあまり受けていないと考えられる。

 

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