考察

集集地震は、大芽埔−雙冬(Damaopu-Shuangdung)断層と車籠埔(Cherungpu)断層の2本の活断層を震源として発生したといわれている。8月17日に発生したトルココジャエリ地震も内陸の活断層を震源とした点で、大きく見れば同じタイプに属する。日本国内の地震を見てみると、1995年兵庫県南部地震、1948年福井地震、1891年濃尾地震が活断層を震源としたという点で、真っ先に思い浮かぶ。ここでは、これら5つの地震について比較を行ってみた。

過去日本国内の活断層で発生した被害地震および最近発生した被害地震との比較
地震名 濃尾地震 福井地震 兵庫県南部地震 コジャエリ地震 集集地震
発生国 日本 日本 日本 トルコ共和国 台湾
発生年月日 1891年10月28日 1948年6月28日 1995年1月17日 1999年8月17日 1999年9月21日
発震時刻 (現地時間) 6時38分 16時13分 5時46分 3時01分 1時47分
マグニチュード 8.0(MJMA相当) 7.1(MJMA) 7.2(MJMA) 7.4(Ms) *1) 7.7(Ms) *1) 7.3(ML) *2)
地震モーメント (dyne・cm) 1.5×1027 *8) 3.3×1026 *8) 2.5〜3.1×1026 *3) 1.8×1027 *3) 2.4×1027 *3)
震源深さ (km)   0 16 17 *1) 1*2)
震央位置 35.6゜N 136.6゜E 36.17゜N 136.20゜E 34.60゜N 135.04゜E 40.70゜N 29.99゜E *1) 23.85゜N 120.78゜E *2)
断層長さ×幅 (km) 85×15 *8) 30×13 *8) 40×10 *8) 60×20 *3) 80×40 *3)
平均すべり量 (m) 3.8 *8) 2 *8) 2.1 *8) 3.3 *3) 2.2 *3)
観測最大水平加速度 (gal) --- --- 818 399 989
被災建物 (棟) 222,501 *7) 51,851 *7) 512,846 244,383 *5) 17,408 *4)
死者 (人) 7,273 *7) 3,769 *7) 6,430 15,756 *5) 2,188 *4)
負傷者 (人) 17,175 *7) 22,203 *7) 43,773 24,940 *5) 8,739 *4)
被害総額 (億米ドル) --- --- 約1,000 約160 *6) ---

1)米国地質調査所
2)台湾中央気象局
3)東大震研菊地教授ら
4)台湾内政部 10/01 06:00現在
5)トルコ首相府危機管理センター発表(9/24 11:30現在)
6)ボガジチ大学HPによる推定値
7)「宇佐美(1996),新編日本被害地震総覧」による
8)日本の地震断層パラメーターハンドブック

 

マグニチュードは濃尾地震が最も大きく、集集地震がこれに次いでいる。地震モーメントは、集集地震が最も大きく、コジャエリ地震、濃尾地震も同じくらいである。福井地震、兵庫県南部地震はずっと小さく、1/5〜1/10位となっている。観測水平加速度の最大値で見ると、集集地震と兵庫県南部地震では800gal以上の大加速度が観測されているが、コジャエリ地震ではその1/2程度であった。震源断層(必ずしも地表に出ているとは限らない)の大きさでは、濃尾地震と集集地震が80km程度の長さで最も長い部類にはいる。

集集地震の地震観測波形はまだ公表されていないが、国家地震研究工程中心のホームページに書かれている南投観測点の加速度応答スペクトルを、コジャエリ地震(Sakarya観測点)、兵庫県南部地震(神戸海洋気象台)のスペクトルと比較してみた。集集地震のスペクトルは、建物の被害に影響が大きい0.3秒から2秒の間で兵庫県南部地震とコジャエリ地震の間の値をとっている。建物に対する影響という点では、兵庫県南部地震の方が大きかったようである。

応答比較

次に、震度の分布を比較してみた。下図に示したのは5地震の震度分布と震源断層(地表に現れたものは実線、現れなかったものは破線で示した)を、同縮尺で示したものである。震度6の範囲の長径は、集集地震、コジャエリ地震、兵庫県南部地震がいずれも100kmで、濃尾地震の200kmが際だって大きい。震度5の範囲は集集地震の場合、島の外にはみ出すと思われるが、少なくとも兵庫県南部地震、福井地震よりも遙かに広いようである。このように見ると今回の集集地震は、日本の活断層の地震と比較した場合、濃尾地震に次ぐ規模と位置づけられる。

台湾
濃尾
集集地震
濃尾地震

福井
神戸
福井地震
兵庫県南部地震

トルコ
トルココジャエリ地震

今回の地震の特徴は、地表地震断層(震源断層が地表まで達して生じた、地表で観察できる地変)による直接的被害が多く発生したことである。日本では一般に地震災害を考える場合、震動、液状化、震動によって生じる崖崩れなどが被害を規定する要因として考えられている。この場合には震源断層は、震動を発生するエネルギー源としてとらえられ、また震源域では断層からの距離の影響があまり大きくないこともあって、断層の正確な位置にはそれほど注意が払われないことが多い。つまり、断層から1kmの距離でも2kmの距離でも地震動の大きさには余り差がないためである。日本では内陸の活断層による地震の頻度が低いため地表地震断層による被害の経験が乏しく、また兵庫県南部地震の際には地表地震断層が都市域を通らなかったためもあって、このような考え方が一般的であった。しかし、集集地震の断層の変位による直接被害は非常に甚大であり、このような考え方が必ずしも妥当では無いことを感じた。実際に地震が発生した場合、どこに地表地震断層が現れるかを予測することは非常に困難ではあるが、今後の地震防災を考える際には、今回の集集地震の経験を生かすことが必要であると考える。

 

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