HOME > プロジェクト > 3D解析高品質化

世界の地質調査業界に
高品質化の道をつくる

3次元地質モデル担当

社会システム事業部 DB開発部

西山 昭一(写真、左)

高品質ボーリング担当

東京支社 副支社長 兼 技術部長

谷川 正志(写真、右)

地質をより直感的に“見える化”

2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震に例を見る通り、日本は世界でも類を見ない地震大国だ。地域毎に異なる地質を綿密に調査し、想定されるリスクに対応した建築や建設をすることが、この国に住まう人々を守るための必須の要素である。応用地質は地球環境のプロとして、これまで日本国内のさまざまな場所における地質調査に貢献してきた。
そんな中、地質調査結果を3次元化することで、地盤を視覚的に捉えることのできる、「GEO-CRE®」や「OCTAS®」をはじめとした地盤リスク情報可視化サービスは、現在の当社の注力分野の一つとなっている。そして、いかに事実に即した信頼性の高い3次元モデルを構築するかが、同サービスの要だ。

「地質調査や建設に携わる人々は、頭の中では地質を3次元化して考えています。しかし、実際のアウトプットは2次元の図面ですし、実際それを用いて業務を進める。このミスマッチが解消できれば、より直感的な理解をしやすくなるはずだ、というのが、3次元地質解析プロジェクトの発端です。現場の作業性向上を目的としたニーズに対し、既に構築しつつあった3次元化技術を、地質技術者向けの作業ツールとして発展させる試みを行いました」
そう語るのは、DB開発部で3次元解析システムの開発や運用に携わっている西山だ。
「実は、3次元地質解析用のソフトウェアの開発は、18年前から進められていました。実際にツールとして販売が開始されたのは2003年に入ってからですが、当社は3次元化地質解析の重要性を、それほど前から考え続けてきたのです」
建造物と地質構造の関係性の把握、地質の数値解析用モデル・設計モデルの構築、そして現場のニーズに合わせたさまざまな表現方法の可能性など、地質を3次元で可視化することで可能になることは多岐にわたるという。
「特に、多くの予算がかけられているような建設プロジェクトは、それに伴う調査も膨大です。近年では、官・民に関わらず、3次元化のニーズが増えてきました」
中には、化石エネルギーや発電所など、より高い信頼性が求められる建造物を必要とする顧客も多い。地盤の液状化のしやすさや構造物の揺れやすさを正確に評価できるようになれば、施設設計の効率化や安全対策に貢献できるという。長年2次元の図面が用いられてきた地質調査の業界に、3次元での評価基準を投入できたことの意味は大きい。

打破しなければならなかったのは、
「不確実だろう」という諦め

しかし、3次元地質解析の高品質化は、システム開発力を高めるだけでは実現できない。地質解析は、あくまでも現場での地質調査結果を元に行われるためだ。ボーリング調査の高品質化に携わった谷川は、その背景をこう語る。
「地質解析は、現場での調査結果という根拠を元に構築されます。つまり、調査の精度をより高めて……確かに『信頼するに足る』結果を得ることができなければ、3次元地質解析の高品質化は成し得ないのです」
これまでの地質調査業界の中には、“どれだけ調査をしても、結局は不確実だろう”という諦めにも似た風潮があった、とも谷川は言う。それは、ボーリング調査により採取したコアの観察が、地質調査の主たる手段となっていることに起因している。
「これまで、ボーリング調査はオペレーターの肌感覚で行われていました。つまり、その質が作業者に完全に委ねられているということです」 同じ調査をしても、採取したコアの層が乱れているか整っているかで、解析結果に大きく差が出る。その事実が、3次元地質解析システムの高品質化には、ボーリング調査の高精度化がいかに重要かを物語っていた。

「私が担当した高品質ボーリングとは、平易に言えば、熟練したオペレーターの手法を全ての作業者ができるように数値化するということです。それまで『肌感覚』の一言で片付けられていたものに、数値という答えを与えてやろう、と」
質の高いボーリングの要件とは、先端にかける荷重、使用する刃先(ビット)の選択、そして送水量と水圧の全てが適切にコントロールされていることだという。地層の硬さ、柔らかさ、そして地層の性質が切り替わる地点に合わせたコントロールの手法を、数値化しモニタしていけば、たとえ経験の浅いオペレーターであっても熟練の技を再現することができる。そしてそれは、「HQCS-MSハークス®」と呼ばれる独自システムを開発することで実現された。
「モニタが可能になったことで、ボーリング調査の信頼性の底上げとともに、若手の育成にも繋がりました。若くて優秀なオペレーターが、従来では考えられないスピードで一人前になっていく」
将来的には、HQCS-MSをより発展させて、ボーリング調査を自動制御で行えるシステムを製作するという。その意味するところは、「高品質ボーリング」がスタンダードになることで、地質調査の信頼性が底上げされるということだ。
“不確実だろう”。業界に漂うその意識を払拭する一翼として、高品質ボーリングには大きな使命が課せられている。

地球環境のリーディングカンパニーとして果たす役割

3次元地質解析と、高品質ボーリング。その2つが、地質調査全体の信頼性向上に寄与するのは言うまでもない。しかし、その普及に関しては未だ途上にあると西山は言う。
「3次元地質解析は、最新技術だからこそ評価や品質の基準がありません。昨今の建設ラッシュに伴い、ニーズは確実に増えているのに、技術がなかなか普及しないのはそのためです」
西山は、独自の基準づくりやマニュアル作成で、社内外に技術の普及活動を行っているという。実績が多いからこそ、声を挙げて旗を振る役割は応用地質が担わなければならない、という意志の現れだろう。そして、その取り組みは国内のみにとどまらないと谷川が付け加える。
「東南アジアをはじめとして、地質調査の品質向上に課題を持っている国は多くあります。綿密な調査のプランニングや基礎技術の改革によって、『地質調査は信頼できるものだ』ということを世界に対して発信する必要があります」
応用地質は地球を相手に仕事をする会社である。その技術を、日本国内のみにとどめているわけにはいかない。

会社の創立から60年という歴史が意味するのは、「安定」ではなく「挑戦」だというのは、二人の共通した思いである。
「リーディングカンパニーというのは、その名の通り業界を牽引していかなければなりません。つまり、常に新しい技術を創出していく責務があるということです。長い歴史のある安定した企業という当社のイメージも一つの側面かもしれませんが、その安定に身を任せているばかりでは、今日の応用地質を築くことはできなかったでしょう」(谷川)
「与えられた仕事をこなすのではなく、課題感を持って自ら学んでいく意識が必要ですね。チャレンジ精神の旺盛な人が、会社として求めている人材なのだと思っています」(西山)
地球を相手にするからこそ、応用地質が挑む課題には終わりがない。