現状と課題
気候変動に伴い激甚化する豪雨災害への対応として、全国の河川で「流域治水」が進められています。流域治水は河川流域全体のあらゆる関係者が協働し,流域全体で水害を軽減させる取組みです。河川区域では「粘り強い堤防」を目指し、堤防の強化、氾濫を防ぐための対策等を加速するとしています。しかしながら、河川堤防は長大な線状構造物で、その基礎地盤は複雑で変化に富んでいるため、従来のボーリング調査を主体とする調査では堤防沿いの連続的な土質構造の把握が難しく、堤防の弱部となるような土質構造を見逃す恐れもありました。
3次元地盤モデルを活用した河川堤防の健全度評価 (Ells3D)
応用地質では、堤防周辺の浅部から深部までの連続的な土質構造を精度よく把握・可視化する新たな牽引式電気探査システムを開発しました。探査結果から堤防周辺の複雑な土質構造を3次元で再現し、堤防の弱部となる行き止まり構造と呼ばれるパイピング危険箇所などを効率的に把握するすることが可能となりました。
さらに探査結果を3次元地盤モデルと統合し、必要に応じて3次元浸透流解析を実施することで、堤防強化に最適な対策工の検討・設計をご提供します。またこれらの3次元データによる設計・施工計画へBIM/CIMを適用し、流域治水における「建設DX」を推進します。
サービス・技術の特徴 1
新たな牽引式電気探査システムにより、浅部から深部までの連続的な土質構造を精度よく把握できるようになりました。得られたデータをもとに、堤防周辺の複雑な土質構造を3次元で再現することで、行き止まり構造と呼ばれるパイピング危険箇所などの堤防弱部を効率的に抽出できます。
改良版牽引式電気探査システムによる
測定作業状況例
従来の牽引式電気探査装置を改良し、現地での作業効率と探査精度の向上を図りました。
改良版牽引式電気探査システムによる
堤防周辺の探査結果例
堤防周辺の地盤を可視化することで、迅速な堤防弱部の抽出と効果的な堤防強化対策の検討が可能となりました。
サービス・技術の特徴 2
牽引式電気探査の結果と3次元地盤モデルとを統合することで、堤防周囲の土質構造全体を3次元的に可視化し、堤防の弱部を迅速に抽出することが可能となります。
この結果をもとに、必要に応じて3次元浸透流解析などを行うことで、現地の状況をより正確に反映した堤防の健全度評価と対策工の検討が可能となります。
サービス・技術の特徴 3
応用地質の流域治水対策ソリューションは、河川堤防健全度評価システム(Ells3D)以外にも、堤防施設周辺の空洞化、耐浸透・耐震性能の評価や、堤防のり面の変状や浸水等のリアルタイム情報発信など、様々な技術を組み合わせたソリューションを提供しています。
適応事例
応用地質では、最新の物理探査や地盤3次元可視化技術を用いた効率的な堤防点検、河川施設の強化設計、監視システムの設置、洪水・浸水シミュレーションなど、様々な技術を組み合わせたソリューションの提供を通じて、流域治水対策に貢献しています。
主な河川調査・設計等の実績
実施年度 | 発注者 | 実施内容 |
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2020年度 | 自治体(東北地方) | 県内河川の浸水解析を実施し、洪水浸水想定区域図を作成 |
国の機関(研究所) | 堤防の被災履歴や浸透対策の状況などを整理し、河川堤防情報図の作成と被災メカニズムを把握することを目的に、浸透流解析と堤防脆弱性指標の算定を実施 | |
国の機関(関東地方) | 堤防内部の土質状況を把握することを目的に、樋管撤去に伴う堤防開削調査と、築堤護岸設計に必要となる地質調査を実施 | |
国の機関(関東地方) | 堤防や河道などの河川管理施設の点検結果の評価と河川管理施設の健全性検討および維持修繕計画のための資料取りまとめを実施 | |
自治体(中国地方) | 物理探査(牽引式電気探査)、堤防の浸透に対する安全性照査と、堤防の詳細調査の必要性についての検討を実施 | |
民間(中国地方) | 牽引式電気探査を用いた、豪雨災害に伴う漏水箇所の調査を実施 | |
2021年度 | 国の機関(東北地方) | 物理探査(牽引式電気探査)を用いた堤防基礎地盤の土質状況の把握、堤防強化工法の検討・設計を実施 |
国の機関(関東地方) | 堤防整備状況の取りまとめと、対策箇所の安全性検証のためのモニタリング結果資料等の整理分析を実施 | |
国の機関(北陸地方) | 物理探査(牽引式電気探査)を用いた堤防基礎地盤の土質構造の把握、堤防等の点検結果からの変状等の評価と、効率的な修繕計画の作成を実施 | |
国の機関(関西地方) | 引堤事業における旧堤防撤去設計、新堤防修正設計等を実施 | |
国の機関(四国地方) | 物理探査(牽引式電気探査)を用いた堤防基礎地盤の土質構造の把握、堤防の浸透性に対する安全性照査を実施 | |
国の機関(四国地方) | 物理探査(牽引式電気探査)を用いた堤防基礎地盤の土質状況の把握、堤防の浸透性に対する安全性照査、対策工法の検討を実施 | |
自治体(四国地方) | 県内河川の浸水解析を実施し、洪水時の浸水想定図と浸水継続時間等の作成を実施 |