現状と課題

気候変動リスク等の脅威や将来の自然災害の増加に備えるだけでなく、快適な住環境を高い水準で備えた都市づくりが求められています。これまでの都市の防災対策は、過去の被害を教訓とした都市火災・建物の耐震化を中心に進められてきました。一方で、都市化の進展により、火災時の延焼遮断や環境改善効果が期待できる「緑」が減少してきています。

近年、地球温暖化の影響によるヒートアイランド現象は、都市をとりまく環境問題の1つであり、安全で快適な住環境を確保する観点から早急な対策が求められています。

このように、これまで顕在化していなかった様々な課題に対応する都市づくりが求められており、防災性能だけでなく環境性能等も含めた都市のリスク評価を踏まえた「防災・環境都市づくり計画」が重要となります。

自然と都市を融合した「防災・環境都市づくり」

人口や資産が密集する都市では、地震やそれに伴う火災等の災害に脆弱な密集市街地の解消が課題となっています。また、防災面の強化だけでなく、景観や地球温暖化にも配慮した都市づくり(防災・環境都市の実現)が求められています。そこで、当社では、3D都市形状データに基づく気流・延焼シミュレーションにより都市延焼リスクを評価し、延焼遮断帯として効果的な道路や緑地等の整備効果を分析するとともに、街路樹などの都市緑化(グリーンインフラ)による防風効果やCO2低減効果なども算出し、都市整備や市街地再開発事業における「防災・環境都市づくり」を支援します。

サービス・技術の特徴1:
防災評価

高層建築物群から密集市街地へと連続する都市部における局地風(巻き風・風の道)や都市緑化等の影響を考慮した3D延焼シミュレーションによって、都市形状によって引き起こされる延焼リスクを定量評価します。これにより、都市における防災面の強化(火災延焼防止、避難の安全性確保、防災活動拠点等の確保)を推進し、安全・安心な住環境の確保が可能となります。

サービス・技術の特徴2:
環境評価

3D気流(温度分布)シミュレーションにより、都市の風の流れや気温分布を空間的に示した「ヒートアイランド対策マップ」を作成し、ヒートアイランド対策に資する「風の道」や街路樹を活用した都市づくりを支援します。これにより、都市における環境面の改善を推進し、快適な住環境の確保が可能となります。

  • 街路樹による防風効果のシミュレーション結果
    都市緑化施策の1つとして、街路樹の植樹が挙げられます。街路樹には上図に示す通り、防風効果(強風を和らげる効果)がありますが、延焼を一時的に抑制する延焼遮断効果も期待できます。
  • 気温分布のシミュレーション結果
    都市構造を考慮した温度分布を把握し、ヒートアイランド対策に資する情報を提供します。

適応事例

横浜市某地区をサンプル地域として、市街地性状や都市緑化の状況を踏まえた気流シミュレーションを行い、局地風の状況予測と、局地風を考慮した延焼シミュレーションの適用性についてケーススタディを実施しました。

従来の対象地域全体で一定の風向・風速に基づいた延焼シミュレーションに対し、局地風を考慮することにより、高層建築物の裏手や幅員の広い道路等では局地的な風向・風速の変化に応じた延焼状況を把握することが可能となり、より現実的な延焼リスクの定量評価が可能になりました。