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インタビュー

東日本大震災から10年 ─ 防災・減災に向け前を向き歩み続ける

2021.05.31

早いものであれから10年。この節目に、応用地質で地震防災に携わる濱田俊介氏に、震災直後に起こったこと、そして、その後の10年間で国や地方の防災行政に、また、日本の地震防災の考え方そのものに、東日本大震災が与えた影響などについて伺いました。

東日本大震災とは

東日本大震災は、どのような地震だったのでしょうか?

災害という意味では津波による死者が多かったことが最大の特徴です。これまで日本で起きた3つの「大震災」で比べると「関東大震災」は“火災”、「阪神・淡路大震災」は“建物倒壊”で亡くなった人が多かったのですが、この度は“津波”でした。

同じ地震でも被害の有り様は全く違ったのですね。

「大震災」という呼称は、地震そのものでなく、地震が起きた後に発生した大きな災害に命名されるもので、その有り様は様々です。理学的に言うと東日本大震災の地震そのものは「東北地方太平洋沖地震」と言います。「大震災」という場合は、社会学的な話の場合です。私たちは「次に“大地震”が起こっても“大震災”は無くしたい」という思いでいます。

地震 東日本大震災 阪神・淡路大震災 関東大震災
地震の概要 発生日時 2011年3月11日
14時46分
1995年1月17日
5時46分
1923年9月1日
11時58分
マグニチュード 9.0 7.3 7.9
地震の種類 海溝型地震 内陸型地震 海溝型地震
震源と深さ 三陸沖24km 淡路市16km 相模湾北西部
津波 あり なし あり
液状化の被害 あり あり あり
人の被害 死者・行方不明者 20,960人 6,437人 105,385人
建物被害 全壊 129,391棟 104,906棟 372,659棟
(一部損壊を含む)
半壊 265,096棟 144,274棟
参照) 応用地質「防災・減災のススメ」

東日本大震災の「地震」の特徴

東日本大震災の地震自体には何か特徴がありましたか?

広い震源域で大きな断層が動いたということです。その範囲は、岩手沖から茨城沖ぐらいまで、動きの大きさはプレート境界で最大で数十メートルとされています。そのため千葉県浦安市にまで及ぶ広い範囲で被害が発生しました。

日本の中でも珍しい規模ですか?

同じメカニズムで発生したと言われている貞観地震は1000年前でした。同じようなことが起こると言われている南海トラフで100~200年に1度です。我々の歴史、ひとりの人生の時間からすると珍しいことと言えるでしょう。しかし、地球にとっては決して珍しくないことなのだと思います。

震災直後、全社を挙げた応用地質の取り組み

震災直後、濱田さんはどのような対応に当たったのですか?

これまでの取引先などから相談ごとが殺到しました。「そちらにはどんな情報が入っている?」「未曾有の大災害が起こったが、次はどのようなことをすればいいだろうか?」「その場合どれくらいの金額がかかるだろうか?」「どれくらいのスピード感が必要なのか?」と言った内容のものが多かったです。地震防災のコンサルティング業務を担当する私の立場では、被災地以外の地域からの仕事が、むしろ多くなりました。

応用地質の会社としては、どのような震災対応に当たったのでしょうか?

震災復興本部が立ち上がり様々な形で仕事をしました。例えば、被災地では、国土交通省や自治体からの依頼で被害状況の調査、対策工の設計、各種土木構造物の点検等を行いました。また、災害廃棄物の処理を、県単位で計画から施工管理まで一括で請け負いました。全社を挙げて、直接・間接を問わず、全社員が何らかの形で関わっていたと思います。

10年経って見えてきたこと

東日本大震災の後、濱田さんが地震防災に関わっている中で東日本大震災が与えた影響の大きさをどのようなところで感じていますか?

当社では、政府の中央防災会議の関連業務として、内閣府より南海トラフで発生する巨大地震に対する防災政策に関わる仕事をさせていただきました。その中で、東日本震災以後に行われた見直しにおいて、この震災で得られた新たな知見、つまり、従来の想定を超える地震の規模や強さなどを南海トラフに当てはめて予測をするということをやりました。

その結果、高知県の黒潮町というところでは津波の高さがなんと34メートルに達すると算定されました。

また、工学的な指針が改められると、それに合わせて行政では新しい被害想定や防災対策の向上が求められ、規制が厳しくなると民間レベルでも対応に神経を使います。多事多忙の第二波が押し寄せてきたという状況になりました。

国の地震防災体制の全体が見直されるほど想定は大きく変わったのですか?

東日本大震災が発生する前は、例えば、宮城県では、宮城県沖地震の複数のプレートが動く連動型という地震が想定されていたのですが、それでもマグニチュード7.6〜8.0と言ったレベルでした。東日本大震災と同じ9クラスは、説ではあっても、それを考えて対策をとるという社会情勢はありませんでした。我々は知っているつもりが全然知らなかったわけです。私たちは、わからないということを前提にしなければならないと認識する必要があります。自然に対してより一層謙虚にならなければなりません。

東北から前を向いて、次の防災・減災のために

東日本大震災が地震防災の考え方そのものに及ぼした影響はありましたか?

防災において「考え得る最大クラス」という考えが導入されました。従来はある地震を対象にした場合の平均像に備えるという考え方でした。ところが国の方で地震によって「レベル1 (発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす地震・津波)」「レベル2 (発生頻度は極めて低いが、発生すれば莫大な被害をもたらす、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波)」という2段階の考え方が明確に出てきて、発生確率の高いものはハード対策で、起こる可能性は低くても起きれば致命的になるというテールリスクに対してはソフト対策で、なんとしても命は守るという二段構えになったのです。

考え得る最大クラスにはどう対処すればいいのでしょうか?

ソフト対策である“一人ひとりの意識”が重要になります。例えば、「34メートルの津波が来る」と言われると、「もう、わしゃここで死ぬよ」と思う人が出てこないとも限りません。でも、町全域が34mで一律に浸水するといったことではありません。住む場所に応じて、住人どうしで「ここはこうだから、こう避難しよう」と、リスクコミュニケーションをとって、正しく恐れることであきらめないことにつなげることができます。起こることを理解して、それに応じた対策をとるという意識を地域に広めることを当社としてもやっているところです。理学工学だけでなく社会学、経済学、心理学といった人文的なことが必要になっているのです。

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