環境リスクと資産除去債務
1.環境リスクとは何ですか?
環境リスクは、私たちの身近に存在していますが、普段は見過ごされていることが多く、建物を解体・新築したり、不動産取引をするタイミングで露呈することが多いのが実態です。土壌汚染の他にも環境リスクは存在しています。
不動産における環境リスク
立地、施設などに対するおもな環境リスクは次のとおりです。
- 造成地:埋設廃棄物、土壌汚染
- 工場跡地:有害物質を使用した錆落とし作業、塗装作業による土壌汚染
- 築年代の古い建物:アスベスト含有吹き付け材の存在
- 工場隣接地:隣接工場からの影響による地下水汚染
- オフィスビル:無届PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の存在
2.環境リスクは企業経営にどんな影響を与えますか?
環境リスクへの対策をすることは、企業にとっては多額の費用が発生することになり、企業会計に影響を与えます。そこで、環境リスクは想定できる含み損であることから、将来発生する費用(負債)として計上しておこうと考える企業が増えてきました。この費用を「環境負債」と呼んでいます。ただし、「環境負債」は概念ですから、法的な会計ルールは現在のところありません。
環境負債として計上すべき費用
環境負債は、企業などの活動に伴って乗じる環境へ及ぼす影響を防止・削減するための義務全般を指しています。具体的には以下のものが該当します。
- 土壌汚染の調査・対策費用
- 汚染された土地の周辺住民の健康診断費用
- PCB使用機器の処分費用
- アスベスト含有建材の処分費用
- 廃棄物の調査・処分費用
つまり、「環境リスク」のほとんどが「環境負債」になります。このように環境負債は土壌汚染のように有害物質を使用する製造業などに限った話ではなく、アスベスト含有建材の処分を考えれば、すべての業種で存在する可能性があります。
3.資産除去債務と環境負債は同じ事?
「資産除去債務」は新しい会計基準のことで、「有形固定資産を除去(解体、撤去など)する場合に、法令や契約書に基づく義務により発生する費用」と定義付けられています。この資産除去債務と、先に説明した環境負債は、損失という考え方は同じですが、異なる点が2つあります。
異なる点その1
「資産除去債務」は環境分野以外の損失も対象とする
- 資産除去債務としては、法に基づいて実施する土壌汚染調査費用はPCB含有機器の処分費用などが該当しますが、環境分野以外でも、契約していた建物の貸借後の復旧費用が該当します。
異なる点その2
「資産除去債務」が"会計基準"であるのに対し、「環境負債」は"概念"である
- 環境負債は、法に基づいて実施する土壌汚染調査費用はもちろん、法に関係なく実施した汚染調査費用や廃棄物の処分費用が該当します。
資産除去債務と環境負債の関係
環境負債のうち、資産除去債務に該当するものは法や契約で要求されるものに限定されていますが、企業経営に影響を与えかねない場合もあるため、環境負債全体の把握が企業経営において必要になります。また環境負債を把握することは、企業の社会的責任の観点や企業における不動産戦略の策定・見直しにおいても重要です。

資産除去債務については、企業は2010年4月以降より義務付けられることになりました。
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